医学部付属病院を巡る汚職事件を受け、東京大学は8日、再発防止や危機管理体制の強化策などを盛り込んだガバナンス(組織統治)改革案を公表した。不祥事が相次いだ病院を医学部付属から大学本部の直轄にすることなどが柱で、記者会見した藤井輝夫学長は「閉鎖的な組織風土を放置し、対応が後手に回ったことは重大なガバナンスの欠陥。不退転の決意で改革を断行する」と強調した。 医学部や付属病院については、外部の有識者でつくる改革検討委員会から「縦割りで閉鎖的」「責任の所在が不明確で統制が不十分」などと指摘された。東大の改革案では「医学部付属」から「大学付属」にすることで大学本部が病院の運営に直接関与し、責任も負う。病院長も大学の執行部に加え、情報共有や意思決定を迅速化する。また、汚職事件のきっかけとなった外部資金の取り扱いについても、審査に外部人材を関わらせ、透明性を確保する仕組みをつくる。 大学全体のガバナンス改革に向けては、今月1日付で新設した理事職の最高リスク責任者(CRO)に、東大法学部OBで三菱UFJフィナンシャル・グループのCROを務めた桑原昌宏氏を充てた。また、新たに設置した「リスク・コンプライアンス統括部」で、全学のリスクを一元的に集約・監視するとともに、教職員らの意識改革などを主導する。 対応が遅れた教職員の懲戒手続きについても変える。これまでは処分決定まで平均2年4か月かかっていたが、弁護士の関与を増やすなどして、半年程度に短縮することを目指す。 改革案について、藤井学長は「実効性を高めるため外部有識者によるモニタリング(継続監視)を実施し、3か月ごとに 進捗しんちょく 状況を公表する」と語った。 東大では、医療機器選定を巡る収賄事件や、医学系研究科教授が共同研究相手から性風俗店で高額接待を受けるなどの不祥事が相次いだ。全教職員を対象にした学内調査でも、利害関係者から飲食の接待などを受けたことが判明し、3月末までに特任准教授ら計21人を訓告や注意処分とした。 一連の不祥事は、東大が目指す「国際卓越研究大学」への認定にも影響を与え、現在は最長1年の「継続審査」となっている。今回の改革案について、文部科学省幹部は「実現可能性をどう担保するかが重要。進捗状況を注視していく」と話した。 継続的な監視 必要 企業や大学のガバナンスに詳しい久保利英明弁護士の話 「独自に人・モノ・金の経営資源を持っていた病院を大学直轄にするには相当な労力が求められる。本部がどう病院をコントロールするのか、継続的な監視が必要だ。一連の不祥事があっても、東大はつぶれることがなく、どこかで『大丈夫だろう』という慢心があるのではないか。教職員や医師など東大に関わる全員が危機意識を共有し、本気で改革を自分ごとと捉えなければ、『絵に描いた餅』で終わってしまうだろう」 (2026年4月9日 読売新聞)