アルコールと消化器疾患
統合プログラム5(S)(JDDW・日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本肝臓学会・日本消化器外科学会・日本消化器がん検診学会)
11月7日(土) 9:00〜12:00 第6会場(神戸ポートピアホテル南館1F大輪田B)
※氏名は敬称略
正宗 淳
東北大大学院・消化器病態学
武藤 学
京都大大学院・腫瘍内科学
清水 雅仁
岐阜大大学院・消化器内科学
横山 顕
国立久里浜医療センター・内科
浪崎 正
奈良県立医大・消化器・代謝内科
魚嶋 晴紀
熊本大・消化器内科
玉置 将司
京都大附属病院・腫瘍内科
内藤 咲貴子
東京医大・消化器内科
坂根 貞嗣
大阪大・消化器内科
小林 貴
横浜市立大・肝胆膵消化器病学
中野 暖
久留米大・消化器内科
中塚 拓馬
東京大附属病院・消化器内科
松居 剛志
手稲渓仁会病院・消化器病センター
関野 泰幹
東北大大学院・消化器病態学
上村 真也
岐阜大・消化器内科/WONDERFUL Study Group



アルコールは肝疾患だけでなく、消化管がんや膵炎など多様な消化器疾患の発症や予後に関わる。また、飲酒量に加え、アルコール代謝に関わる遺伝的背景や肥満・代謝異常、生活習慣なども複雑に影響し、臓器ごとに病態やリスクの現れ方が異なる。本セッションでは肝臓、消化管、膵臓を横断し、基礎から臨床、予防、治療まで、アルコールと消化器疾患をめぐる最新の知見を紹介。司会の武藤学氏は、「世界保健機関(WHO)は『健康にとって安全な飲酒量は存在しない』と啓発しており、医療者がアルコールによる健康被害を正しく理解し、禁酒・節酒対策を含め社会への啓発・教育につなげることが肝要だ」と話す。
飲酒量や遺伝的要因まで、アルコールの影響を多角的に解き明かす
本セッションではまず、アルコールが各消化器疾患に及ぼす影響を捉える。基調講演では、横山顕氏が多量飲酒者のがん、肝障害、膵炎、「食べない飲酒」などを取り上げ、アルコール依存症への早期介入の重要性を整理する。肝疾患領域では、浪崎正氏がアルコール関連肝疾患(ALD)患者に対するナルメフェン投与について、安全性を含めて検討した多施設共同臨床研究を報告。投与後の飲酒リスク低下や肝障害指標の改善が12カ月間持続したことを踏まえ、薬物療法による飲酒量低減の実臨床での位置付けに焦点を当てる。魚嶋晴紀氏は、消化器内科外来でアルコール使用障害同定テスト(AUDIT)を用いて患者を層別化し、精神科や多職種との連携につなげる取り組みを紹介する。問題飲酒を早期に把握し、専門治療や社会支援につなぐ診療モデルとして注目される。
日本人のアルコール関連疾患では、遺伝的な個人差も重要になる。玉置将司氏は、呼気中のアセトアルデヒド/エタノール濃度比と頭頸部・食道の発がんリスクとの関連を検討。飲酒量に加え、アセトアルデヒド曝露を反映する指標から発がんリスクを評価しうることを示す。内藤咲貴子氏は、食道扁平上皮がん治療後の異時性第二原発がんと、生活習慣やアセトアルデヒド関連変異シグネチャーとの関連を解析し、治療後の長期的なサーベイランスや生活習慣への介入を考える上で示唆に富む知見を提示する。
代謝異常や治療後の長期予後に広がる飲酒の論点
脂肪性肝疾患の演題も複数予定されている。坂根貞嗣氏は、肥満マウスを用いた研究から、アルコール負荷によって肝臓の脂質代謝や小胞体ストレスに関わる経路が変化し、脂肪肝炎を悪化させる可能性を示す。小林貴氏は、検診受診者を対象にMAF-5を用いたMetALDの線維化診断戦略を検討。中等量の飲酒でも、飲酒量の増加に伴い肝疾患イベントや肝関連死のリスクが上昇したことを報告するとともに、MAF-5によるリスク層別化の有用性を提示する。中野暖氏が報告する、脂肪性肝疾患(SLD)の各病型を対象とした大規模メタ解析の結果は、代謝異常と飲酒の「二重のリスク」を評価・介入するという観点から注目される。また、中塚拓馬氏は約400万例の健診データから飲酒量の経時的変化と肝関連イベントとの関連を解析し、飲酒量の評価では、一時点だけでなく経時的な変化を追跡する重要性を示す。
治療後の長期予後も重要なテーマだ。松居剛志氏は、中等症・重症アルコール性肝炎患者では救命後の再飲酒例が多く、長期予後に影響することを明らかにし、退院後の断酒支援や精神科との連携を含む継続的な診療の必要性を議論する。膵疾患では、関野泰幹氏が慢性膵炎の発症や病態、発がん、生命予後へのアルコール関連遺伝子や飲酒習慣などの関与について、アルコール関連慢性膵炎と非関連慢性膵炎の違いや喫煙の影響を含め検討した結果を報告する。上村真也氏は、アルコール性急性膵炎後の膵周囲液体貯留に対する内視鏡治療について、飲酒量と治療成績との関連を多施設で検討した研究を発表する。
アルコール関連疾患の対策は、遺伝的背景や代謝異常を踏まえた個別のリスク評価に加え、飲酒行動への介入が求められる。武藤氏は「医療者は患者の飲酒に寛容となることなく、社会全体の飲酒に対する意識を変えていく役割を担ってほしい。本セッションを通じて、現在ある知見を日常診療に落とし込む具体的な方策に目を向けてほしい」と、広く聴講を呼びかける。
第69回日本消化器病学会大会
[会長]大平 弘正
(福島県立医科大学 消化器内科)
第114回日本消化器内視鏡学会総会
[会長]阿部 展次
(杏林大学 消化器・一般外科)
第31回日本肝臓学会大会
[会長]芥田 憲夫
(虎の門病院 肝臓内科)
第25回日本消化器外科学会大会
[会長]五井 孝憲
(福井大学 外科学(1))
第65回日本消化器がん検診学会大会
[会長]小田 丈二
(こころとからだの元氣プラザ 消化器内科)
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