待ち望まれる「結核予防できる」ワクチン
研究の背景:「BCGは結核予防効果が弱い」は常識ではないのか
先日、Twitter(@georgebest1969)で「娘にはBCG打たせてない」という話をしたら、相当数の人に驚かれた。中には、小児科医なのに驚く人もいた。ひどいのは「イワタは反ワクチンだ」と罵る始末。なんとまあ。
BCGが肺結核予防効果に乏しいことは、感染症領域では「常識」に属する。当然、みんな(少なくとも医療者は)知っていると思っていたが、甘かった。どうも厚生労働省が制度設計しているものは、みんな正しいと素朴に信じている人は案外多いのだと思い知った。そりゃ、誰もHPV(子宮頸がん)ワクチンを打たなくなるはずだよね。
従来の結核菌ワクチン、BCGはむかーしからあるワクチンだ。ウシ型結核菌からつくられた生ワクチンである。小児に接種すると結核予防効果が期待できるが、それは当該地域の結核の多さに依存する。結核の多い途上国では効果が見込まれるが、途上国のように結核が多いわけではない先進国では、BCGの効果は相対的に目減りする。
そもそも、BCGには「感染」自体を予防する効果はないと考えられている。BCGの効果は、感染状態から疾患発症への移行、特に髄膜炎や粟粒結核など重症型への移行の予防だ*1。また、成人における発症予防効果はないか限定的で、小児でも結核発症そのものが減るのは発症率が高い地域のみだ。もちろん、生ワクチンであるBCGは、免疫抑制者や妊婦には禁忌である。
先進国の多くはワクチンで結核に対峙するよりも、潜伏期の不顕性感染(LTBI)の時期にインターフェロン-γ検査などで感染の有無を確認して、抗結核薬を飲ませる方がより効率的だと考えている。だから多数の先進国は、BCGを小児期の推奨予防接種にしていない。最近まで接種していた英国やオーストラリアなども、BCGのルーチン接種を止めてしまった*2。日本でBCGはいまだに小児の定期予防接種に入っているが、これは先進国では稀有な例なのだ。
*2 The BCG World Atlas 2nd Edition
BCGのルーチン接種が妥当か否かについては、今も議論がある。議論があるということは、BCGを打つ行為も打たない行為も絶対的に正しいとか、間違っているとか断言し難いということだ。もちろん、BCGを打たない選択肢は決して「反ワクチン」なのではない。もしそれが反ワクチンなら、欧米諸国の多くは反ワクチン国になってしまう。HPVワクチンの例でも分かるように、どちらかというと日本こそが「反ワクチン」的国家と見なされている(少なくともワクチン後進国とは見なされている)わけで・・・。
いずれにしても、BCGよりベターなワクチンは必要だ。これについてはどんな立場の人も異論あるまい。そこで今回紹介する研究である。
Tait DR, Hatherill M, Van Der Meeren O, Ginsberg AM, Van Brakel E, Salaun B, et al. Final Analysis of a Trial of M72/AS01E Vaccine to Prevent Tuberculosis.N Engl J Med. 2019 Dec 19;381(25):2429-2439.
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岩田 健太郎(いわた けんたろう)

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長。 著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。
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