第7回:「もう死なせてください」と言われたら
あなたは担当する女性患者Aさんに厳しい病状を伝えた。
あなた:Aさん、今回の検査結果から、病気は進行しているようです。これ以上侵襲的な治療を続けると、かえって命を縮めてしまいかねません。今後は痛みなどの苦しい症状を取ることに専念しましょう。
Aさん:そうですか。とても残念です・・・・(涙)。先生、この先もつらい思いをするのなら、ひと思いに死んでしまいたい。もう死なせてください。
Aさんは感情が高まり、激しく泣いていた。あなたは「死なせてください」という言葉に一瞬たじろいだが、Aさんの感情が静まるのを待って、次のように伝えた。
あなた:Aさんの苦しみは、私にもよく伝わりました。しかし、Aさんを死なせることは私にはできない。つらさを少しでも取り除いて、Aさんが「まだ生きていたい」と思えるように、できる限りのケアをしたいと思う。今Aさんがどんなことで苦しんでいるのか、これからのことでどんなことを心配しているのか、私に教えてほしい。
Aさん:何より心配なのは、これから自分が死ぬまで、どんなふうに苦しむのかということです。また、夫と子供たちは自分たちのことで精いっぱいです。なので、自分が家族の負担になるぐらいなら、もう終わりにしてほしい。
あなた:苦痛緩和の医療技術も進歩していますから、Aさんが苦しまないようにいろんなことができると思います。また、Aさんが安心して療養できる環境についても一緒に考えていきましょう。
あなたの言葉に、Aさんの表情が少しだけ和らいだようだった。
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清水 研(しみず けん)
がん研究会有明病院 腫瘍精神科 部長
1971年生まれ。精神科医・医学博士。金沢大学卒業後、都立荏原病院(現・東京都保健医療公社荏原病院)での内科研修、国立精神・神経センター(現・国立精神・神経医療研究センター)、都立豊島病院(現・東京都保健医療公社豊島病院)での一般精神科研修を経て、2003年、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)東病院精神腫瘍科レジデント。以降、一貫してがん患者および家族の診療・ケアを担当している。2006年、同センター中央病院精神腫瘍科勤務。同科科長を経て、2020年4月より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。日本サイコオンコロジー学会登録精神腫瘍医。近著に『がんで不安なあなたに読んでほしい。 自分らしく生きるためのQ&A』(ビジネス社)、『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)。









