"ビヨンドSPRINT"目指した中国のRCT

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研究の背景:脳卒中が多いアジア人での厳格降圧効果は不明

 科学技術研究における中国の発展は目覚ましいが、医学論文においてもいまや質量ともに米国を凌ぐ勢いである。

 大規模ランダム化比較試験(RCT)において、2015年に米国で発表されたSPRINT試験は、その後の世界の高血圧治療を一変させた研究であった。収縮期血圧(SBP)120mmHg未満を目指す厳格降圧により、心血管イベントおよび全死亡のリスクが有意に低減したのだ。 中国もこのSPRINT試験とほぼ同規模のSTEP試験を完遂し、厳格降圧治療の有用性を示したのが、今回の論文である。

Trial of Intensive Blood-Pressure Control in Older Patients with Hypertension. N Engl J Med2021年8月30日オンライン版

 SPRINT試験の対象は白人、黒人、ヒスパニック系であったことから、STEP試験はアジア人で厳格降圧効果はどうかという課題への挑戦でもある。血管合併症として欧米人では心筋梗塞が多い一方、アジア人では脳卒中が多いという疾病構造の違いがある。中国で実施されたSTEP試験の意義は、日本の実地臨床においても参考になる。

桑島 巖(くわじま いわお)

東京都健康長寿医療センター顧問、NPO法人臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)理事長。1971年、岩手医科大学医学部卒業。1973年、東京都養育院付属病院循環器科勤務。1980~82年、米・ニューオリンズオクスナー研究所留学(Dr. Frohlichに師事)。1988年、東京都老人医療センター(旧:東京都養育院付属病院)循環器科医長、循環器科部長、内科部長、副院長(組織改正により2009年、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター副院長)。専門領域は高血圧、血圧日内変動、高血圧性心疾患。著書に『高血圧、変わる常識変わらぬ非常識』(ライフサイエンス出版)、『赤い罠』(日本医事新報社)、『血圧変動の臨床』(新興医学出版社)など多数。

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