【緊急寄稿】レケンビは費用対効果が悪いのか!
済生会熊本病院 脳卒中センター 特別顧問 橋本 洋一郎

治療終了後に効果がなくなるとする公的分析モデルには賛同しがたい
7月9日に開催された厚労省・中医協で費用対効果評価専門組織は、レカネマブ(商品名レケンビ点滴静注)に関する「医薬品・医療機器等の費用対効果の総合的評価案について」(2025年6月27日策定)を公表した。「レカネマブの費用対効果が悪い」とする評価結果を踏まえ、薬価が最大15%引き下げられる見通しとなったようである。
中医協で示されたのは、従来の治療と比較するなどして費用対効果を検証したところ、現在の薬価の3分の1から4分の1程度が妥当であったとの評価結果である。
従来治療の比較対象は、アルツハイマー病による軽度認知障害には非薬物療法、アルツハイマー病による軽度認知症にはドネペジル(商品名アリセプト)+非薬物療法となっている。ただ、ドネペジルは対症療法であり、治療中は症候が改善するが、中止すると非治療の症例と同じ状態になる薬剤である。一方、レカネマブは毒性の強いプロトフィブリルが主なターゲットであるが、アミロイドプラークの除去も結果として起こる薬剤である。20年ほどかけて蓄積したアミロイドプラークが、治療によってかなりの割合で除去されるため、1年半の治療が終了した後は薬剤の効果がなくなるとする公的分析モデル(ドネペジルと同じ考え)には賛同しがたいところである。
参考の「レケンビ点滴静注の費用対効果評価案策定に係る主な検討事項」には、公的分析結果に関する問題点も記載されている。また、企業分析結果を公表している製薬企業側もしっかり反論している(関連記事「エーザイが反論!『中医協はレケンビを過小に評価』」)。
7月9日にエーザイからは、リリース「厚生労働省の中央社会保険医療協議会によるレケンビの費用対効果評価について」が出されている。企業分析と公的分析について分かりやすく解説してあり、説得力のある内容と感じる。
中医協の資料の最後には、同資料に関する留意事項として以下のものが挙げられている。
中医協とエーザイの両者から発表された内容を熟読して判断するしかないが、同じ薬剤の費用対効果の評価を行っても、立場や考え方、解析法によって大きな差が出る状況であることは認識しておくべきだろう。少なくとも企業分析は、費用対効果を評価する際に一般的に用いられるマルコフモデルが使われているが、公的分析は独自に作成したモデルを用いている。
統計などは全く専門外であるが、個人的な意見としては、薬価を下げるためのバイアスがかかった公的分析となっているように感じる。
「drug lag」ではなく、「drug loss」の国になる懸念も
薬価は低い方が患者や家族にとって良いことではあるが、わが国での評価が極端に低く、安過ぎる薬価になると、薬品開発がグローバル化している中で、「drug lag」ではなく、開発がされない「drug loss」に陥り、医療の発展の恩恵にあずかれなくなる国になってしまう。
特にアルツハイマー病の治療薬は、過去四半世紀にわたってさまざまな臨床試験が行われ、挫折してきた経緯がある。そのような中で、ようやくレカネマブとドナネマブ(商品名ケサンラ)が登場した。これが初めの一歩となり、今後はさらに改良が進み、費用対効果のより高い薬剤が開発されると期待しているし、変性疾患とされてきた神経難病であるパーキンソン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、前頭側頭葉変性症、皮質基底核変性症などの治療につながっていくのではと展望している。
無料でいますぐ
会員登録を行う
- ご利用無料、14.5万人の医師が利用
- 医学・医療の最新ニュースを毎日お届け
- ギフト券に交換可能なポイントプログラム
- 独自の特集・連載、学会レポートなど充実のコンテンツ
\ 60秒でかんたん登録 /
会員登録










