ドクターズアイ 柳靖雄(眼科)

炎症が腸から網膜へ飛び火する?

腸内細菌叢と加齢黄斑変性の意外な関係

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研究の背景:AMDの病態解明に新たな光

 加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration;AMD)は、先進国の高齢者人口における不可逆的な視力喪失の主たる原因である。世界の高齢化に伴い、AMDの有病率は着実に増加しており、まさに公衆衛生上の危機となりつつある。この進行性の網膜疾患は、鮮明な中心視力を担う黄斑部にダメージを与え、日常生活に不可欠な読み書きや顔の認識といった能力を奪う。

 AMDの研究と治療は、病態が生じる「目」そのものに焦点を当ててきた。しかし、近年の目覚ましい研究の進展により、眼科疾患を「閉じた局所的な問題」として捉える従来の考え方を根底から覆す、新たな概念が登場している。それが「腸・網膜連関(Gut-Retina Axis)」である。一見すると目とは何の関係もないように思える腸の内部環境、特にそこに生息する膨大な数の腸内細菌叢(マイクロバイオーム)が、遠く離れた網膜の健康状態に深く関与しているという仮説である。

 本稿では、この革新的な視点に基づき、AMDの病態解明に新たな光を当てた最新の研究成果を解説する(Ophthalmol Sci 2025; 6: 100920)。

柳 靖雄(やなぎ やすお)

医療法人社団祥正会お花茶屋眼科手術外来院長、横浜市立大学視覚再生外科学客員教授、デューク・シンガポール国立大学医学部Adjunct Professor

東京大学医学部を卒業(1995年、MD)し、同大学大学院で医学博士号を取得(2001年、PhD)。基礎医学に強固な学術的バックグラウンドを持ち、200本以上の科学論文を執筆、国内外で10以上の賞を受賞。東京大学医学部眼科学教室講師(2012~15年)、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授(2016~20年)、旭川医科大学眼科学教室教授(2018~20年)を歴任し、現在は横浜市立大学視覚再生外科学客員教授(2020年~)およびデューク・シンガポール国立大学医学部Adjunct Professor(2020年~)として国際共同研究に積極的に関与している。専門は黄斑疾患で、新規治療薬に関する特許を多数出願。スタンフォード大学とエルゼビア社が2024年に発表した「世界のトップ2%の科学者リスト」に選出された。DeepEyeVisionの取締役としてAI技術の開発に携わり、国際誌「TVST」や「Scientific Reports」の編集者としても日本のプレゼンス向上に貢献。都内のクリニックでは質の高い診療を提供し、地域医療にも尽力。現在、医療経済研究、創薬、国際共同臨床研究など多岐にわたる分野で積極的に活動している。

柳 靖雄
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