ドクターズアイ 齋田良知(整形外科)

「筋力は回復したのにリハビリ停滞」の正体

ACL再建術後、多くの選手が直面する悩み

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研究の背景:術後の不動化による"廃用"で説明されてきたが...

 「先生、どう力を入れていいか分からないんです」

 前十字靱帯(ACL)再建術後の選手から、何度も聞いてきた言葉である。ただし、この言葉の意味するところは1つではない。術直後と競技復帰前で、異なる"2種類の違和感"として現れる。

 術直後のメディカルリハビリテーション段階では、そもそも大腿四頭筋にうまく収縮が入らない。特に内側広筋は入りにくく、「力を入れているつもりでも入っていない」という状態が目立つ。一方、リハビリテーションが進み筋量も回復してきたアスレチックリハビリテーション段階では、「筋肉はあるのに出力が上がらない」「踏ん張れない」といった別の形の違和感として現れる。

 この「筋肉はあるのに使えない」という問題は、時期によって表現は異なるものの、本質的には共通している可能性がある。

 従来、この現象は術後の安静や活動制限による"廃用(disuse)"で説明されてきた。すなわち、「使っていないから弱くなる」という理解である。しかし実際には、同程度の不動化を経験した症例と比較しても、ACL再建術後の筋力低下はより顕著で、回復にも時間を要する。この差は本当に"廃用"だけで説明できるのだろうか。

 今回、Journal of Applied Physiologyに掲載された研究は、この素朴だが本質的な疑問に真正面から向き合っている(J Appl Physiol 2026; 140: 1123-1130)。ACL再建術後の筋萎縮と純粋な廃用モデルを分子レベルで直接比較することで、「使っていないだけなのか、それとも別の何かが起きているのか」を明らかにしようとした点で、非常に意義深い研究である。

齋田良知(さいた よしとも)

順天堂大学整形外科・スポーツ診療科准教授(運動器再生医学講座特任教授)

順天堂大学医学部を卒業後、同大学整形外科・スポーツ診療科に入局。Jリーグジェフ千葉および女子サッカー日本代表(なでしこジャパン)のチームドクターを務め、2016年にはイタリアのサッカークラブACミランに帯同した。2016年のいわきFC発足時からチームドクターを務める。2018年、一般社団法人日本スポーツ外傷・障害予防協会を設立し、代表理事に就任。変形性膝関節症など変性疾患の治療経験も豊富で、多血小板血漿(PRP)療法を含む幅広い治療選択肢を患者に応じて使い分けている。

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