1987年:ライム病の国内初症例

昭和62年4月23日号

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新聞キャプチャ

 1987(昭和62)年4月23日発行のMedical Tribune紙は、国内で初めて確認されたライム病症例について、第61回日本感染症学会(同年4月2~3日、東京)における日本大学臨床病理学講師の川端真人氏らの報告を詳報しています。

 ライム病はスピロヘータ科ボレリア属の細菌を病原体とする人畜共通感染症。マダニによって媒介されます。1970年代に米国のライム地方で流行したのが病名の由来です。

 川端氏らがライム病を確認したのは、学会報告の前年の6月。症例は64歳男性で、長野県の妙高高原を散策した際、腹部に咬着したダニを発見しました。咬着部に紅斑が生じ、近医で治療を受けましたが紅斑が拡大したため、日本大学板橋病院を受診。病変はライム病に特徴的な慢性遊走性紅斑の特徴を有しており、米疾病対策センター(CDC)に依頼した血清学的診断でBorrelia burgdorferiに対する抗体価の上昇が認められたことから、ライム病と診断されました。

 記事では、「マダニが活動期に入る5月ころの急性期患者に対する血清学的診断をしたい」「日本のライム病の臨床症状を正確に記載しなければならない」との川端氏の抱負を紹介しており、初症例に遭遇した研究者の意気込みが伝わってきます。

 ライム病は現在でも欧米では年間数万人の患者が発生しており、日本でも年間10例程度の報告があります。ダニが媒介する感染症としては他にも、つつが虫病、日本紅斑熱、ダニ媒介性脳炎などがあり、最近では重症熱性血小板減少症候群(SFTS)がトピックスです。2011年に中国で初めて報告され、日本での初症例は2013年の致死的疾患。患者は増加傾向にあり、有効な抗ウイルス療法が確立されていないため、要注意です。

 さらに、2021年には北海道大学のグループが、マダニが媒介する新たなウイルスとしてエゾウイルスを発見しています。体長わずか数ミリながら、新たな医学課題を次々と投げかける厄介な生き物です。

「Medical Tribuneが報じた昭和・平成」企画班

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