研究の背景:運動とALS発症リスクの関連は議論が分かれる 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症には、遺伝要因だけでなく運動や職業曝露などの環境要因が関与する可能性が以前から議論されてきた。特にラグビーやサッカー選手、軍人など「激しい身体活動」に長年従事してきた人に ALS が多いのではないかという症例報告や観察研究が相次ぎ、イタリアのプロサッカー選手では一般人口と比べてALSの発症率が高く、発症年齢も若いという報告もある(Amyotroph Lateral Scler Frontotemporal Degener 2020; 21: 403-409)。こうした結果から、「激しい運動=ALS の危険因子」というイメージが半ば独り歩きしている印象がある(実際に、フルマラソン完走歴のある男性ALS患者を私自身も複数経験している)。