ドクターズアイ 鈴木重明(脳神経内科)

極端な運動はALSの危険因子か?

mTORと遺伝×運動

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研究の背景:運動とALS発症リスクの関連は議論が分かれる

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症には、遺伝要因だけでなく運動や職業曝露などの環境要因が関与する可能性が以前から議論されてきた。特にラグビーやサッカー選手、軍人など「激しい身体活動」に長年従事してきた人に ALS が多いのではないかという症例報告や観察研究が相次ぎ、イタリアのプロサッカー選手では一般人口と比べてALSの発症率が高く、発症年齢も若いという報告もある(Amyotroph Lateral Scler Frontotemporal Degener 2020; 21: 403-409)。こうした結果から、「激しい運動=ALS の危険因子」というイメージが半ば独り歩きしている印象がある(実際に、フルマラソン完走歴のある男性ALS患者を私自身も複数経験している)。

【監修】鈴木重明(すずき しげあき)

東京都立神経病院脳神経内科、副院長

1968年東京生まれ。慶應義塾高校から慶應義塾大学医学部に進学し、1993年卒業。ニューヨーク医科大学留学、慶應義塾大学准教授(内科学・神経)を経て、2025年4月より現職。重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン(日本神経学会)、がん免疫療法ガイドライン(日本臨床腫瘍学会)、スタチン不耐に関する診療指針(日本動脈硬化学会)の作成メンバー。都立神経病院では自己免疫ラボを立ち上げ、重症筋無力症、炎症性筋疾患、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象など自己免疫疾患の臨床研究を展開中。

鈴木重明

【執筆】木田耕太(ぼくだ こうた)

東京都立神経病院脳神経内科部長

1977年滋賀県生まれ。2002年浜松医科大学医学部卒業後、藤枝市立総合病院や川崎市立川崎病院で総合診療・救命救急・神経内科の研鑽を積む。ALSをはじめとする神経変性疾患の診療に携わる中で自身の力不足を痛感し、ライフワークとして取り組むことを決意して2008年に東京都立神経病院脳神経内科で研修。2011年同病院脳神経内科、2017年同科医長、2021年ALS/MNDセンター長(併任)。2025年より脳神経内科部長を務める。ALS/MNDセンター長として栄養療法や臨床倫理などに関わる研究やデータベースの構築を進めるとともに、ALS超早期診断を目指した神経生理学的バイオマーカ開発に注力し、国際学会を含めた報告を行なっている。

木田耕太
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