研究の背景:cCSC治療における歴史的課題と新たな潮流 慢性中心性漿液性脈絡網膜症(cCSC)は、網膜下への漿液性液貯留が遷延することで視細胞へ不可逆的な損傷を与え、深刻な視機能障害を招く疾患である。cCSCの本態は、脈絡膜の血管過透過と肥厚を特徴とするパキコロイド(Pachychoroid)病態である。 現在、日本における新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)の診療ガイドライン(GL)では、パキコロイド所見がAMDの早期病変と記載されているように、CSCは短期的に重篤な視力低下を来すことは少ない。だが、長期的に慢性化した場合には視力を脅かす網膜疾患の中で社会的影響は大きいものと考えられている。 cCSC治療のゴールは網膜下液(SRF)および網膜内液(IRF)の完全消失である。黄斑新生血管(MNV)を併発している場合には、nAMDに準じて治療が行われるが、MNVを伴わない症例に対する治療は確立していない。ランダム化比較試験(RCT)VICIでミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)エプレレノンの有効性が否定され(Lancet 2020; 395: 294-303)、マイクロパルスレーザーも限定的な効果にとどまる中、ゴールドスタンダードである光力学療法(PDT)は、ベルテポルフィンの世界的な供給不足という致命的なロジスティック・クライシスに直面している(関連記事「加齢黄斑変性症治療薬ベルテポルフィンの限定出荷を開始」)。こうした背景から、MNVを伴わない症例に対する抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法の再評価が急務となっている。従来のラニビズマブやアフリベルセプトでは一貫した治療成績が得られなかったが、第二世代VEGF阻害薬の登場がこの状況を打破しつつある。 今回は、cCSCに対する臨床試験BRICSの成果(Am J Ophthalmol 2026; 283: 149-162)について分析したい。