ハンタウイルスのヒト・ヒト感染とスーパースプレッダー

アルゼンチンでの事例

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(© Adobe Stock ※画像はイメージです)

研究の背景:珍しいヒト・ヒト感染事例

 2020年の論文だが、注目を集めているハンタウイルスの話題なのでここで解説する。アルゼンチンで発生したハンタウイルス感染アウトブレイクの事例報告である。

 ハンタウイルスは韓国で見つかった腎症候性出血熱の原因ウイルスとして知られるが、南北アメリカ大陸ではハンタウイルス肺症候群(HPS)という異なる臨床像を呈し、1993年に米国で初めて報告された。アルゼンチンはHPSが比較的多い国で、1996年に発見されたアンデスウイルス(ANDV)がその原因となる。アルゼンチンでの死亡率は21〜50%と高い。

 通常は齧歯類の尿などの分泌物がエアロゾル化し、これを吸入してヒト感染が起きる。しかし1996年にアルゼンチンのエル・ボルソンでアウトブレイクが発生し、別の街に伝播したことからヒト・ヒト感染が疑われるようになった。このようなヒト・ヒト感染事例はアルゼンチンとチリでしか報告されていない。症状のある患者との長時間・濃厚接触が危険因子となる。

 2018〜19年にかけて、アルゼンチンのエプイエンでANDVによるHPSアウトブレイクが発生しスーパースプレッダーの存在が疑われた。これを報告したのが、今回紹介する論文である。

Martínez VP, et al. "Super-Spreaders" and Person-to-Person Transmission of Andes Virus in Argentina. N Engl J Med 2020; 383:2230-2241.

岩田 健太郎(いわた けんたろう)

神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より現職。著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。

岩田 健太郎
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