ドクターズアイ 川口浩(整形外科)

イベニティ注射は本当に12回必要か?

日本の骨粗鬆症治療の常識を見直し、脱「低価値・金食い虫医療」!

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研究の背景:「一過性の骨形成促進」と「持続する骨吸収抑制」を示すロモソズマブ

 骨粗鬆症治療薬ロモソズマブ(商品名イベニティ)は、骨形成促進薬(骨アナボリック薬)に分類されており、月1回皮下注射を12カ月続けることで骨密度(BMD)を増加させ、椎体骨折や大腿骨近位部骨折のリスクを低下させる。従来の骨吸収抑制薬よりはるかに高薬価(1回5万円超)であるにもかかわらず、日本では「アナボリックファースト」の旗印の下、高リスク骨粗鬆症患者のみならず、従来であれば骨吸収抑制薬が選択されていたような患者層にも適応が拡大しつつある(関連記事「暴走する『アナボリックファースト』を止めよ!」)

 しかし、現在までに蓄積されたエビデンスを俯瞰すると、どうしても1つの疑問に行き着く…「本当に12回もの注射が必要なのだろうか」。臨床データから浮かび上がるロモソズマブの作用機序は、テリパラチドやアバロパラチドといった従来の骨形成促進薬とは明らかに異なっているのだ。

 主要第Ⅲ相試験であるFRAME(N Engl J Med 2016; 375: 1532-1543)およびARCH(N Engl J Med 2017; 377: 1417-1427)では、骨形成マーカーであるP1NPは投与開始直後から上昇するものの、その上昇はわずか3カ月程度でなくなる。一方、骨吸収マーカーであるβ-CTXは開始直後から低下し、その抑制は1年間持続する。さらに、骨生検を用いた詳細な骨形態計測研究では、ロモソズマブの作用は「直後2カ月間の一過性の骨形成促進」と「1年間持続する骨吸収抑制」であることが示されている(J Bone Miner Res 2019; 34: 1597-1608)。

 つまり、ロモソズマブは1年間を通じて骨形成を促進しているわけではない。「最初の2~3カ月だけは骨形成を促進するが、途中から骨吸収抑制作用がメインになる」という極めて変わった薬剤である。ということは、「1年間12回投与」という現在の標準レジメンは本当に最適なのだろうか、より短期間の投与で同等の効果が得られる可能性はないのだろうか―

 今回紹介する論文は、この疑問に正面から挑んだ研究である(Lancet Diabetes Endocrinol 2026; 14: 216-222)。

 

川口 浩(かわぐち ひろし)

社会医療法人社団蛍水会 名戸ヶ谷病院・整形外科顧問

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。2019年、東京脳神経センター・整形外科脊椎外科部長。2023年から現職。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。整形外科専門医・脊椎脊髄外科専門医(日本専門医機構)、脊髄脊髄外科名誉指導医(日本脊椎脊髄病学会)。Peer-reviewed英文原著論文は370編以上(総計impact factor=2,120:2026年5月現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa Delta Awardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G. Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の医療の「大樹」も「長いもの」も、科学的に公正なものであることを願っている。

川口 浩
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