下肢切断に失明、凄まじかった糖尿病患者の今
英・レジストリ研究UKRR
研究の背景:日本の1990年代には日々目にした糖尿病患者の血管障害
この原稿をお読みくださっている方々はどのような年格好で、何の専門家なのだろうか?
筆者は1991年に医学部を卒業した腎臓内科医であるが、その世代が病棟を走り回っているころ、すなわち1990年代前半は糖尿病性腎症由来の透析患者の中には、壊疽により下肢切断を余儀なくされたり、網膜症の進行により全盲に至る方が一定の割合で存在した。糖尿病患者における血管障害の凄まじさを日々目の当たりにしたものである。しかしその後、高血圧に続き糖尿病の治療が急激に進歩し、これらの患者は目に見えて減少した感がある。
今回紹介する研究(Clin Kidney J 2026; 19: sfag049)は、海の向こうで糖尿病の血管障害がどのような状況にあるのかをうかがい知ることができる英国のレジストリ研究である。UK Renal Registry(UKRR)は、ロンドンから西に車で約2時間半のブリストルに本拠を置く英国腎臓協会が、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドにおける2003~17年の状況について後ろ向きに解析したものであり、わが国ではまさに糖尿病性血管障害の減少期に当たる。
筆頭著者であるNithin Bodapati博士のプロフィールは、同姓同名のアーティストがいることもあってブリストル大学に所属する以外は詳細不明だが、レジストリを行っているUK Kidney Associationは75年の歴史を持つ腎臓領域における多職種の協会である。2021年に腎臓内科医の学会(Renal association)と多職種の学会組織(British Renal Society)を合併し、現在英国内における腎臓領域の学術的な活動を総括している。もちろん小さな団体は無数にあることが予想されるが、専門分化によりいまだに同じ領域で学会が増え続け、それぞれの運営が厳しくなっているわが国から見れば、少しうらやましい感がある。
今回の解析元データとなったUKRRは、英国の成人腎臓センター71施設および小児腎臓センター13施設から収集されたデータを用いている。1995年に開始され、以降毎年年次報告が刊行されているが、位置付けとしては日本透析医学会の「わが国の慢性透析療法の現況」、日本臨床腎移植学会・日本移植学会の「腎移植臨床登録集計報告」、さらに日本腎臓学会の「腎臓病総合レジストリー年次報告」を一体化したものと捉えてよい。ただし、公式サイトで公開されている範囲に限っていえば、クオリティの面では「わが国の慢性透析療法の現況」に一日の長ありといった印象である。
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