絶食でもフルストマック?GLP-1薬が招く誤嚥リスク
OCULUS試験が示すRCTエビデンス
研究の背景:厄介な胃排出遅延作用、術前管理の現状と課題
GLP-1受容体作動薬(セマグルチド他)やGIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド)は、2型糖尿病治療にパラダイムシフトを起こしただけでなく、心血管疾患リスクの軽減をはじめ、肥満症、慢性腎臓病(CKD)、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)など、多岐にわたる疾患への治療効果が次々と実証されている。これに伴い、実臨床においてGLP-1/GIP作動薬を内服・注射している患者に遭遇する機会は爆発的に増加している。
麻酔科医や内視鏡医にとって最大の懸念は、GLP-1/GIP作動薬が持つ「胃排出遅延作用」である。中枢神経系への作用や、迷走神経を介したアセチルコリン放出抑制などのメカニズムにより胃の動きが停滞するため、ガイドライン通りの絶食時間を遵守していても、麻酔・鎮静導入時に胃内容物が残存(フルストマック)し、逆流・誤嚥を引き起こすリスクが指摘されてきた。
この問題に対し、米麻酔科学会(ASA)は2023年、「毎日投与薬は当日休薬、週1回投与薬は1週間休薬」という術前管理指針(コンセンサスガイダンス)を発表した。しかし、当時の推奨は症例報告や後ろ向きの観察研究に依存した比較的保守的なものであった。
そのため実臨床では、一律の休薬指示によって「必要な検査・処置の延期」「糖尿病コントロールの悪化」「患者への説明やスケジュール管理の煩雑さ」といった弊害が生じ、より個別化したアプローチを求める声が上がっていた。
こうした中、胃内容物の残存が「実際にどの程度の頻度で、臨床的に意味のあるレベルで起こるのか」、そして「休薬によって本当にリスクを下げられるのか」を前向き単盲検ランダム化比較試験(RCT)として世界で初めて検証したのが、今回紹介するOCULUS試験(JAMA Intern Med 2026; 186: 578-584)である。
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