ドクターズアイ 川口浩(整形外科)

歴史的転換!「骨折評価なしで骨粗鬆症薬を承認」

米国で進む規制変更「骨密度で代替」

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研究の背景1:ロモソズマブ以降、新薬開発が停滞

 現在、世界で使用されている主な骨粗鬆症治療薬〔ビスホスホネート、デノスマブ、副甲状腺ホルモン(PTH)製剤、ロモソズマブ〕は、全て1990年代以降に承認されたものであり、「骨折抑制(新規椎体骨折、非椎体骨折、大腿骨近位部骨折)の有効性」を主要評価項目としたランダム化比較試験(RCT)によって開発されてきた。

 しかし、ロモソズマブ以降約7年間、世界的に新規作用機序を有する骨粗鬆症治療薬は上市されておらず、開発パイプラインも停滞したままである。その背景には、30年以上続いた骨折抑制を主要評価項目とする臨床開発が数千〜1万人規模かつ数年間に及ぶ巨大試験となり、開発費・開発期間・倫理面のいずれにおいても限界に達している現状がある。

 これを受けて、米食品医薬品局(FDA)は昨年(2025年)12月19日、骨粗鬆症治療薬の開発戦略を大きく転換する歴史的な決定を公表した。閉経後骨粗鬆症を対象とする新薬開発において、二重エネルギーX線吸収法(DXA)で測定した全大腿骨近位部骨密度(total hip bone mineral density;total hip BMD)を、骨折抑制効果に代わる代替評価項目(surrogate endpoint)として正式に認定したのである。これにより、骨折ではなくtotal hip BMDを主要評価項目として新薬の有効性を評価する道が開かれた。

 この歴史的な規制変更の原動力となったのが、Study to Advance BMD as a Regulatory Endpoint(SABRE)プロジェクトである。

川口 浩(かわぐち ひろし)

社会医療法人社団蛍水会 名戸ヶ谷病院・整形外科顧問

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。2019年、東京脳神経センター・整形外科脊椎外科部長。2023年から現職。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。整形外科専門医・脊椎脊髄外科専門医(日本専門医機構)、脊髄脊髄外科名誉指導医(日本脊椎脊髄病学会)。Peer-reviewed英文原著論文は370編以上(総計impact factor=2,120:2026年5月現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa Delta Awardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G. Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の医療の「大樹」も「長いもの」も、科学的に公正なものであることを願っている。

川口 浩
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