アウトサイダーの視点

世界に告発「iPS製品は極めて危険な治療法」

従来の再生医療製品にはない「生物学的問題」も

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする

極少症例かつ短期間の試験では評価できない安全性

 今年(2026年)3月のDoctor’s Eyeで、人工多能性幹(iPS)細胞を用いた再生医療製品2件(パーキンソン病治療「アムシェプリ」と重症心不全治療「リハート」)が再生医療早期承認制度を使って仮承認されたことを批判するコラム(関連記事「最悪の暴挙!『iPS』の前で思考停止する薬事行政」)を書いてから5カ月が経過した。この内容が国際医学ジャーナルExpert Opinion on Biological Therapyに掲載され、世界に発信することができた(Expert Opin Biol Ther 2026年7月27日オンライン版)。この論文では、今回の仮承認の「規制上の問題」と「生物学的問題」の2点を指摘している()。

図. iPS再生医療製品仮承認の「規制上の問題」と「生物学的問題」

Expert Opin Biol Ther 2026年7月27日オンライン版)

 「規制上の問題」である「再生医療早期承認制度を利用した極少症例・短期間の試験による見切り発車での承認」については、10年以上にわたってNatureScienceをはじめ国際的な批判を浴びてきた。私も日本の現場医師の立場から、ハートシート(重症心不全)やコラテジェン(閉塞性動脈硬化症)、ステミラック(脊髄損傷)についての批判を国際ジャーナルに発信してきた(関連記事「『日本の再生医療に暗雲』と世界に告発」「NHKによる偏向報道をトップジャーナルで批判」)。

 しかしながら、これらは人為的遺伝子操作を加えていない自分の細胞(自家細胞)を用いた再生医療製品である。一方、今回のiPS再生医療製品は、「規制上の問題」に加えて従来製品にはない重大な「生物学的問題」を抱えている。に示したように、外因性遺伝子導入による「iPS細胞特有のリスク」、さらには自分の細胞ではなく他人の細胞を使っていることによる「他家iPSバンク由来のリスク」である。これらによるがん化、腫瘍・テラトーマ形成、長期免疫・拒絶反応に関する安全性は今回のような極少症例(7~8例)かつ短期間(1~2年)の試験ではとても評価することはできない

 すなわち、iPS再生医療製品は重大な生物学的リスクが未解明のまま市場に出てしまった極めて危険な治療法ということになる。

 

川口 浩(かわぐち ひろし)

社会医療法人社団蛍水会 名戸ヶ谷病院・整形外科顧問

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。2019年、東京脳神経センター・整形外科脊椎外科部長。2023年から現職。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。整形外科専門医・脊椎脊髄外科専門医(日本専門医機構)、脊髄脊髄外科名誉指導医(日本脊椎脊髄病学会)。Peer-reviewed英文原著論文は370編以上(総計impact factor=2,120:2026年5月現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa Delta Awardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G. Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の医療の「大樹」も「長いもの」も、科学的に公正なものであることを願っている。

川口 浩
  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする