2度の熊本地震、災害後の心停止を防ぐために
九州7県2万7,000例の中断時系列解析
初めに:発災、その瞬間
今年(2026年)7月28日16時27分、私は病棟のナースステーションで、椅子に座ってカルテを記載していた。突然、床の下から突き上げられるような強い衝撃が走り、椅子から転げ落ちた。続く強い揺れの中で立つことはできず、体を支えることが精一杯であった。ただ身を低くし、揺れが収まるのを待つしかなかった。
揺れが収まった後、窓から外を見ると古い家屋が完全に潰れていた。斜めに傾き、今にも倒壊しそうな家も見えた。これまで見慣れていた風景が、一瞬にして姿を変えていた。
病棟のホールへ出ると、リハビリ中だった患者の多くが転倒し、動けない状態になっていた。病室では設置していた棚が倒れ、それにぶつかったり、挟まったりした患者もいた。先ほどまで日常の診療が行われていた病棟は、傷病者の状態を直ちに見極めなければならない災害現場へと変わっていた。私はすぐにトリアージに取りかかり、患者の状態と緊急度を1人ずつ確認していった。
平成28年熊本地震に続き、私は2度の大地震を経験した。一瞬にして変わってしまう風景とともに、人々の生活もまた一変してしまうことを、あらためて目の当たりにした。発災直後の混乱の中で、以前に私がまとめた論文を読み返すと、10年前に見聞きした光景や診療現場で抱いた問題意識が鮮明によみがえってきた。過去の経験と研究結果を、少しでも今の診療と被災地の備えに役立てたい-その思いから本研究を紹介する(Circ J 2025; 89: 1824-1832)。
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