ドクターズアイ 大前憲史(泌尿器)

尿失禁予測、「大腰筋」の可能性とは?

RARP患者、術前CT画像で検討

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研究の背景:予測因子候補として注目されるサルコペニア関連指標

 ロボット支援根治的前立腺全摘除術(RARP)は、限局性前立腺がんに対する標準治療の1つとして国内外で広く行われている。尿失禁は性機能障害とともにRARPの代表的な合併症で、患者のQOL低下に大きく影響を及ぼす。時間経過とともに改善するものの、1年後も一定数の患者で持続する。

 実臨床では「尿漏れは術後どのくらいで治りますか?」「自分は尿漏れが残りやすいでしょうか?」など、患者から不安の声が聞かれることも少なくない。ただ、年齢やBMI、膜様部尿道長や神経温存の有無など、術後尿禁制との関連が報告されている因子は複数あるものの、一人一人の患者について術前に正確な見通しを示すことは容易ではない。

 こうした中、有用な予測因子の候補としてサルコペニア関連指標が注目されている。中でも腰椎レベルの骨格筋量に焦点を当てたものがあるが、術後尿失禁との関連については結果が一貫していない。

 また、多くの研究では尿失禁について「1日に使用したパッド枚数」など患者の自己申告に基づく評価が行われてきた。だが、1枚のパッドをどの程度の失禁量まで使用するかはパッドの種類や個人の感覚で大きく異なり、尿失禁量をいかに客観的に評価するかが大きな課題とされている。

 今回紹介するのは、術前CT画像で簡便に測定できる大腰筋断面積(psoas major muscle cross-sectional area;PMM-CSA)に着目し、RARP後の尿失禁との関連を検討した研究である。失禁量は、標準化された1時間パッドテスト(1-hour pad test;1hPT)で定量的に評価し、術前から術後12カ月まで追跡した。PMM-CSAが12カ月後も持続する尿失禁の予測因子となるか、さらには尿禁制回復の経時的推移とどのように関連するかを検証した(Clin Genitourin Cancer 2026; 24: 102565)。

大前 憲史(おおまえ けんじ)

福島県立医科大学病院臨床研究教育推進部部長・特任准教授

2003年、名古屋大学医学部卒業。臨床研修後10年間、がん手術を中心に泌尿器科医として研鑽を積む。東京女子医科大学泌尿器科(助教)、京都大学大学院医療疫学分野(博士後期課程)、福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター(研究フェロー)などを経て、2026年より現職。専門は泌尿器科学×臨床疫学。臨床業務に携わりながら、臨床研究における方法論的な観点から研究や教育活動に従事。社会健康医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、社会医学系専門医、日本臨床疫学会上席専門家、日本老年泌尿器科学会評議員の他、学会機関誌の編集委員も務める。良質なエビデンスをいかに効率的かつ効果的にユーザーに届けられるかが近年の関心事。著書に『医学論文査読のお作法 査読を制する者は論文を制する』(健康医療評価研究機構)などがある。

大前 憲史
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