ドクターズアイ 岩田健太郎(感染症)

菊池病の原因微生物?

原因不明のリンパ節炎に感染症起源の可能性浮上

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(© Adobe Stock ※画像はイメージです)

研究の背景:原因不明疾患に微生物の影...?

 菊池病(Kikuchi-Fujimoto disease)は日本人が発見した数少ない疾患の1つだ。有名なのは川崎病とか、高安病ですよね。あと、私は数年前まで勘違いしていたのだけど、泉熱も日本人の名前を取った病名だ。「せんねつ」と長年、間違って読んでいたが、あれは「いずみねつ」が正しい。泉仙介先生が発見した感染症だ。

 それはともかく。

 菊池病は原因不明の頸部リンパ節炎として知られる。若い女性に多く、発熱、リンパ節腫脹を伴うので、よくわれわれのところにも相談が来る。感染症ミミックの非感染症だ。通常はリンパ節生検で組織球性壊死性リンパ節炎を確認して診断する。自然治癒することも多いし、ステロイドで治療することもある。再発も多い。

 と思っていたら。

 実はこれ、感染症なんじゃね?と言い出す人たちが現れた。そのグループの論文を今回紹介する。

Lu L, et al. Nocardia farcinica as a Potential Pathogen Associated With a Clinical Subtype of Kikuchi–Fujimoto Disease. Clin Infect Dis 2026; 83: 35–40.

 今回の論文を書いたグループは先行研究で、原因不明の発熱と播種性リンパ節腫脹を呈する患者からNocardia farcinicaのDNAが高頻度で検出されると報告している。

Lu   L, et al. Insidious infections of Nocardia farcinica in immunocompetent individuals with fever of unknown origin and disseminated lymphadenopathy. Clin Microbiol Infect  2025; 31: 1405–1407.

 ここから派生して、「菊池病の原因もN. farcinicaじゃね?」と研究者は考えたのだ。そこで、同じくリンパ節腫脹を来すキャッスルマン病(CD)と比較することで、この仮説を検証したのが本研究である。菊池病の病因は依然不明であり、感染性抗原に対する過剰な免疫反応が仮説として考えられている。

 余談だが、菊池昌弘(1934〜2012)は九州大学出身の病理学者で、後に福岡大学医学部長や大学病院長を歴任している。菊池病について初めて報告したのは1972年のこと。藤本吉秀(1926〜2016)は東京大学出身の外科医で、甲状腺の研究を行い、後に東京女子医科大学内分泌外科に赴任。同時期に菊池とは別に同疾患を報告しているが、日本では比較的無名だ(理由は知らない)。

 さらに余談だが、Benjamin Castleman(1906〜1982)は米国の病理学者で、1954年にCDを報告している。イエール大学やマサチューセッツ総合病院で活躍した。

 閑話休題。

岩田 健太郎(いわた けんたろう)

神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より現職。著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。

岩田 健太郎
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