ドクターズアイ 倉原優(呼吸器)

肺NTM症、気管支拡張症重症で難治化

治療失敗のオッズ比8超:10年間の後ろ向きコホート研究

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背景:肺NTM症の治療前に気管支拡張症をどう評価するか

 肺非結核性抗酸菌(NTM)症と気管支拡張症は、原因と結果を一方向には決めにくい関係にある。NTM感染による慢性炎症と気道傷害は気管支拡張を進めうる一方、拡張した気道では分泌物の排出が滞り、NTMが定着・持続しやすくなる。実際、肺NTM症では気管支拡張症の併存が多い。しかし、治療開始時に確認した気管支拡張症の重症度が、その後の菌陰性化や治療成功にどこまで影響するかは十分に検討されていなかった。

 臨床で知りたいのは、原因菌と薬剤感受性だけで治療の見通しを立ててよいのかという点である。画像上の気管支拡張が高度で、低体重や増悪・入院歴を伴う患者では、長期の多剤治療を完遂しても反応に乏しい可能性がある。治療目標の共有、喀痰培養の監視、服薬支援、気道クリアランスなどをどの段階から強化するかを考える上で、治療前の予後層別化は重要である。

 今回紹介する研究は、中国・上海の単施設データを用いて気管支拡張症重症度指数(Bronchiectasis Severity Index;BSI)と肺NTM症の治療成績との関連を検討した10年間の後ろ向きコホート研究である(Chest 2026年7月28日オンライン版)。解析の結果、気管支拡張症重症例で治療失敗オッズが8倍超となることが示された。

倉原 優(くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

倉原優
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