「ダンサーを診る医師」として、踊るまでを見届ける
国立病院機構埼玉病院 整形外科 竹島憲一郎
背景:競技ダンスから舞台医学へとつながった「原点」
ダンサーを診る整形外科医を志すようになった原点は、学生時代の競技ダンス部での経験にある。慶應義塾大学医学部入学時、「大学から始めても全国優勝を目指せるスポーツ」と両親に勧められ競技ダンス部に入部した。日々の練習を積み重ね、東京六大学選手権優勝、全日本学生競技ダンス選手権決勝3位という成績を収めることができた。
しかし、2年生の夏、当時のパートナーが下腿疲労骨折を呈し、大会前に練習ができなくなってしまった。秋の大会は全て予選落ちとなり、痛みと不安に苦しむ彼女に対し、医学を学ぶ立場でありながら適切な助言も治療への橋渡しもできず自らの無力さを痛感した。
競技ダンスやバレエといった審美系身体活動は、舞台での華やかさとは裏腹に、高い心肺負荷と跳躍回数を伴う過酷な全身運動である。この経験から、「ダンサーの力になれる医師になりたい」という思いが芽生え、足の外科、そして舞台医学へと関心を深めた。
臨床では、永寿総合病院(東京都)の平石英一氏(当時)のバレエ外来との出会いが転機となった。バレエのポワントやプリエ、ターンアウトなどの動作とアライメント評価を組み合わせることは、それまで経験してきた整形外科外来とは全く異なり衝撃を受けた。ダンサー診療は、局所を治して終わりではない。患者が踊れるようになるところを見届けるまで医療が必要である。そのためには、動作評価と段階的復帰の設計に加え、理学療法士、トレーナー、指導者との連携が欠かせない。
舞台医学は黎明期だが、日本ダンス医科学会、国際ダンス医科学会(International Association for Dance Medicine and Science;IADMS)、そして日本舞台医学会など、国内外でダンサーや舞台芸術家を支える専門家が集う学会活動が広がっている。筆者も各学会に所属し、発表やシンポジウムを通じて知見の共有、ネットワーク形成に取り組んでいる。加えて、日本では一般社団法人芸術家のくすり箱NEOが、バレエやダンスをはじめとする舞台芸術家の健康支援と情報提供を行っている。筆者も同法人の中心メンバーの1人として、ダンサーを診る医療者(医師、理学療法士、トレーナーなど)の育成と連携体制の構築に関与している。そうした中で、印象的だった症例を紹介する。
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舞台医学は、舞台上で行われる芸術、すなわち、演劇、音楽、舞踊などさまざまな舞台芸術の医学的対応を行う学術的、実践的分野・領域。日本舞台医学会は、舞台芸術の医学への応用に関する諸活動を推進し、医学および舞台芸術文化の発展に寄与することを目的として、研究会から発展する形で2023年10月に設立された。










