〔編集部から〕バレエダンサーの足部障害、音楽家の上肢障害やジストニア、オペラ歌手の声帯炎――。舞台芸術の現場には、特殊な医学的課題が潜んでいます。本連載では、第一線で活躍する医師たちが、舞台医学(Stage Medicine)の奥深い世界と実際の症例を通じて、この新しい医療分野の魅力はもちろん、日常診療に役立つヒントをお届けします。 背景:自身の経験からダンス医学の道へ 筆者は足の外科を専門とする整形外科医である。自身のバレエ経験と受傷を契機にバレエダンサーの障害に興味を持ち、現在はダンサーの診療・研究を行いながら、バレエ団のサポートにも関わっている。診療に際しては、整形外科研修で得た知識・技術に加え、ダンス医学関連書籍・論文の知見、ダンサー診療に特化した海外施設の見学、関連学会参加を通じて習得した知識を活用している。 ダンス医学というと聞き慣れない方が多いかもしれないが、ダンサーの診療を含めた包括的なケアについて多職種が集まり議論する国際ダンス医科学会(IADMS)は、今年(2026年)で第36回を迎える歴史を持つ。国内においても近年、日本舞台医学会、日本ダンス医科学会など、舞台芸術家支援を目的とした学術活動が拡大している。 本稿では症例を提示し、整形外科外来におけるダンサー診療の特徴について考察する。