Dr.小堀の性症例ファイル

「夢精=正常」という落とし穴

新しい疾患概念“Long-Term Nocturnal Emission”

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こんにちは、プライベートケアクリニック東京の小堀善友と申します。もともとは一般泌尿器科の専門医でしたが、現在は性感染症、男性不妊症、性機能障害を専門とする都内のクリニックに勤務しています。専門性の高いクリニックだけあって、一般の病院ではお目にかからないような珍しい症例をよく目にします。先生方の学びにつながるような症例を、定期的に紹介します。

 「夢精(夜間射精)」と聞くと、多くの医療者は「思春期男子に見られる生理現象」というイメージを持つだろう。実際、その認識は間違っていない。夜間射精(Nocturnal Emission;NE)は、睡眠中に自然に射精を認める現象であり、男性の性成熟過程における正常現象として古くから知られている。

 ところが、男性性機能診療を行っていると、「夢精が多くて困る」という訴えに、まれに遭遇することがある。われわれは従来、そうした訴えを"疾患"として捉えることがほとんどなく、患者側も「こんなことを相談してよいの分からなかった」と話すことが多い。

 そんな、「夢精が多くて困っている」という症例を、最近立て続けに3例経験した。しかも全例が単に「夢精が多い」で済ませられるレベルでなく、深刻なQOL障害を来していた。

 まさか、夢精で困るような疾患なんてないだろうと思いつつ検索してみると、2024年に中国から "Long-Term Nocturnal Emission(LTNE)" という新しい疾患概念を提唱したYu Zhaoらの論文を見つけてしまった。

 Zhao Y, et al. Long-Term Nocturnal Emission: A New Possible Disease. Biomed J Sci Tech Res 2024

 ちなみに、この論文はいわゆるハゲタカジャーナルと思われる論文で、pubmedにも掲載されていない。そんな信用できない論文を紹介してよいものか悩んだが、新しい疾患概念として非常に興味深いものなので紹介したい。

 

小堀 善友(こぼり よしとも)

プライベートケアクリニック東京 東京院院長

2001年、金沢大学医学部卒業。金沢大学泌尿器科、米・イリノイ大学シカゴ校泌尿器科、獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授を経て、2021年より現職。日本泌尿器科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本性機能学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性科学会セックス・セラピスト。著書に『オトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『今日の診断指針第8版「男子性発育の異常」』(医学書院)など。

小堀 善友
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