集中治療とは、重篤な病態に陥った患者に対し、診療科の垣根を越えた包括的アプローチによって、社会復帰を目指しチーム一丸で取り組む医療です。今回の取材では、産褥期の後天性血友病AやSGLT-2阻害薬関連ケトアシドーシスといった希少かつ緊急性の高い症例への対応から、周産期における多職種連携の要諦や、集中治療医としての持続可能なキャリアパスのあり方など、幅広く網羅しました。 SGLT2関連正常血糖ケトアシドーシス、予防策は? 近年、SGLT2阻害薬は心不全や慢性腎臓病に適応が拡大したことで、糖尿病以外での処方が急増している。同薬使用時には高度侵襲、絶食、感染などを契機として正常血糖ケトアシドーシス(euDKA)を来す場合があり、重症化リスクが高いため集中治療室(ICU)や周術期管理において早期認知と適切な予防介入が重要となる。愛知医科大学救急集中治療医学講座の久下祐史氏は、自施設のICU入室患者におけるSGLT2関連euDKA発症例を対象に、臨床的特徴や予防戦略などについて検討。結果を第53回日本集中治療医学会(3月5~7日)で報告した。・・・ ICU患者の低栄養、腎機能障害との関連は? 重症患者の低栄養は腎機能障害の危険因子として知られる。しかし、既存研究における低栄養は血清アルブミンなどの検査値や重症度スコアを用いたリスク評価法に基づいており、真の低栄養診断基準が適用されることはまれである。さらに、多くの研究は心臓疾患などの単一集団に焦点を当てており、多臓器かつ多疾患を背景とする集中治療室(ICU)患者集団におけるエビデンスは限られている。そこで、横浜市立大学病院集中治療部の川畑慶一郎氏は、自施設のICUに入室した成人患者を対象として、国際的に承認されたGlobal Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)基準による真の低栄養と、腎臓病学の国際的組織KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)基準に基づく既存の慢性腎臓病(CKD)および新規の急性腎障害(AKI)発症との関連を後ろ向きに検討。結果を第53回日本集中治療医学会(3月5~7日)で報告した。・・・ 真の多職種連携で変わる!周産期集中治療 集中治療では、患者を中心に医師、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床工学技士などの多職種がそれぞれの専門性を生かしながら関与する。対象が周産期患者の場合は、さらに産科医、助産師、新生児科医らが加わる。日本集中治療医学会が主体となり企画した『周産期集中治療ガイドブック』の第Ⅳ章が「多職種連携」としている通り、妊産婦の集中治療では多職種連携医療の実践が欠かせない。旭川医科大学救急医学講座准教授/同大学病院救命救急センター副センター長の丹保亜希仁氏は第53回日本集中治療医学会(3月5~7日)で、周産期集中治療における多職種連携の正しい概念と、集中治療医や関連職種が果たすべき役割について解説した。・・・ 集中治療医は一生の生業となる! 集中治療医は年齢を重ねても第一線で活躍できる専門職なのか-。松波総合病院(岐阜県)救命救急センターセンター長の山口均氏は第53回日本集中治療医学会(3月5~7日)で、自身の約40年の経験を踏まえた知見と国内外のエビデンスを基にキャリアパスについて考察。「集中治療医こそ一生の生業とすることができる」と力強く語った。・・・ 産褥期に発症、子宮全摘となった後天性血友病Aの一例 後天性血友病Aは、血液凝固第Ⅷ因子に対する自己抗体(インヒビター)が産生されることで重篤な出血症状を呈する希少疾患である。確定診断には時間を要する一方、治療遅延が予後を左右するため迅速な対応が求められる。富山県立中央病院集中治療科部長の堀川慎二郎氏は第53回日本集中治療医学会(3月5~7日)で、産褥期に後天性血友病Aによる致死的出血を来した30歳代女性の症例を紹介した。内科的管理の効果を期待する意見もある中、子宮全摘出術を主張した集中治療医の視点が注目される症例である。・・・ 2026年開催学会レポート一覧に戻る