今年の日本消化器病学会は「次世代型消化器病学を探る」をテーマに、多数のガイドライン・セッションが行われました。ここでは、MASLD診療ガイドライン改訂に関する最新の議論を中心に、MASLDとサルコペニア肥満との関連、さらに免疫チェックポイント阻害薬投与中のプロトンポンプ阻害薬使用と肝障害発症との関連についての報告も合わせてご紹介します。 チルゼパチドはMASLDに有用か? 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)に対し、国内で承認された治療薬はないが、昨年(2025年)8月に米食品医薬品局(FDA)が代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を適応としてGLP-1受容体作動薬セマグルチドを迅速承認(日本でも承認申請中)した。他方、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの実臨床におけるエビデンスは不足している。日本医科大学病院消化器肝臓内科の長尾千香子氏は、2型糖尿病合併MASLD患者183例を対象にチルゼパチドの有効性と安全性について検討する多施設共同後ろ向き研究を実施。結果を第112回日本消化器病学会(4月16~18日)で報告した。・・・ がん免疫療法中の制酸薬併用、肝障害リスクは? 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、多くのがん種への適応が拡大する一方、免疫関連有害事象(irAE)としてさまざまな臓器への障害を来しうる。近年、ICI投与中のプロトンポンプ阻害薬(PPI)併用が、消化管irAEの重症化や腎障害リスクの増大と関連する可能性が指摘されているが、肝障害に関するエビデンスは限られている。名古屋大学病院化学療法部の水野和幸氏は、自施設でICIを投与した1,494例を対象に、制酸薬の併用が肝障害の発症頻度および重症度に及ぼす影響について検討。結果を第112回日本消化器病学会(4月16~18日)で報告した。・・・ サルコペニア肥満が肝線維化リスクを高める? 近年、慢性肝疾患(CLD)において、予後や合併症に影響を及ぼす因子としてサルコペニアが注目されている。さらに、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者の増加により、サルコペニアを伴う肥満(サルコペニア肥満)の危険性も指摘されている。サルコペニア肥満は動脈硬化との関連が知られているが、肝線維化についてはエビデンスが十分でない。長崎市立病院機構長崎みなとメディカルセンター副院長の市川辰樹氏は、肝線維化の指標である肝硬度を用いてMASLDなどのCLDにおけるサルコペニア肥満の意義について検討。結果を第112回日本消化器病学会(4月16~18日)で報告した。・・・ 薬物療法に新展開?MASLDの治療戦略 2023年の国際的なコンセンサスによる疾患概念の刷新を受け、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の治療では肝臓にとどまらない包括的管理が求められている。国内で承認された治療薬はないものの、昨年(2025年)8月に米食品医薬品局(FDA)が代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を対象としてGLP-1受容体作動薬セマグルチドを迅速承認(日本でも承認申請中)するなど新たな展開が見られる。久留米大学内科学講座消化器内科部門主任教授の川口巧氏は、第112回日本消化器病学会(4月16〜18日)で、今年4月に刊行された『MASLD診療ガイドライン2026』(改訂版GL)における治療戦略について解説した。・・・ MASLD診療GL、治療選択の改訂点 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)/代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)へと病名が変更され、今年(2026年)4月には書名を新たに『MASLD診療ガイドライン(GL)2026』(以下、GL2026)が刊行された。改訂を機にMASLDの治療フローチャートも、従来の肝生検による鑑別診断を前提としたyes/no式から上段に「生活習慣の改善」、下段に「肝疾患および併存疾患のマネジメント」を配置した2段構造に刷新された。GL2026における治療選択のポイントについて、京都府立医科大学大学院消化器内科学教室准教授の山口寛二氏が、第112回日本消化器病学会(4月16~18日)で解説した。・・・ MASLD診断、肝生検依存から非侵襲的評価へ 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、肥満および耐糖能異常、脂質異常症などの代謝異常を背景に発症し、肝硬変や肝細胞がんへと進展するリスクを有するため、早期診断とリスク層別化が極めて重要である。従来の診断は肝生検に依存していたが、今年(2026年)4月に刊行された『MASLD診療ガイドライン(GL)2026』では、非侵襲的検査(noninvasive tests: NITs)の進展を反映して評価法が大きく改訂された。横浜市立大学肝胆膵消化器病学主任教授/国際臨床肝疾患センター長の米田正人氏は、第112回日本消化器病学会(4月16〜18日)で、新たな「診断戦略」について解説した。・・・ MASLD高リスク群を見逃さない! 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)では、肝線維化の進展に伴い死亡リスクが段階的に上昇し、特に肝線維化ステージF2以降で顕著となる(Clin Gastroenterol Hepatol 2023; 21: 931-939.e5)。したがって、患者を早期かつ確実に拾い上げ適切な専門医療につなげる必要があり、今年(2026年)4月に改訂された『MASLD診療ガイドライン(GL)2026』では、高リスク群の絞り込み・フォローアップフローチャートが作成された。岡山大学大学院消化器・肝臓内科学(第一内科)特任教授の川中美和氏は、第112回日本消化器病学会(4月16〜18日)で、高リスク群の同定におけるかかりつけ医の役割について、具体的な診断方法・基準を解説した。・・・ GL改訂で刷新!MASLDの概念と定義 2023年の国際的なコンセンサスにより脂肪性肝疾患(SLD)における病名と病型分類が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)から代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)/代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)へと変更された。それに伴い、日本の『NAFLD/NASH診療ガイドライン(GL)2020』も改訂に際して書名を変更、今年(2026年)4月に『MASLD診療GL2026』(以下、GL2026)が刊行された。新たな疾患概念・定義が臨床現場に及ぼす影響や、SLDが飲酒量により3分類された意義について、武蔵野赤十字病院(東京都)消化器内科副部長の玉城信治氏が、第112回日本消化器病学会(4月16~18日)で解説した。・・・ 2026年開催学会レポート一覧に戻る