デバイスの進化とエビデンスの蓄積により、日々アップデートが続く心血管インターベンション治療領域。今回は、ACS患者におけるLDLコレステロール<40 mg/dL達成と心血管アウトカムの関連や、PCSK9阻害薬2剤のLDLコレステロール低下効果の比較など脂質管理の最新知見の他、高齢・複雑病変PCIの治療戦略、SELECT試験におけるセマグルチドと心房細動発生の関連、腹腔動脈圧迫を背景とした動脈瘤破裂の症例などを取材しました。 PCI中のアナフィラキシーを機に動脈瘤破裂を来した1例 正中弓状靭帯症候群(median arcuate ligament syndrome;MALS)は、横隔膜の正中弓状靭帯が腹腔動脈を圧迫することで生じるまれな疾患で、食後の腹痛などを主症状とする。若年から中年の女性に多いとされるが、性や年齢を問わず動脈瘤形成などの血管合併症を来し、致死的な出血として発症することがある。心臓血管研究所(現・JA神奈川県厚生連相模原協同病院循環器内科医長)の石崎祐弥氏は第34回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2026、7月16~18日)で、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)中のアナフィラキシーショックを契機に、MALSを背景とした動脈瘤破裂を来した50歳代男性の症例を報告した。・・・ セマグルチド、心房細動への影響は? 肥満は心房細動(AF)発症の危険因子であり、体重減少介入により発症・再発リスクが抑制される。だが、肥満症治療薬のGLP-1受容体作動薬セマグルチドとAFとの関連は十分に解明されていない。東京大学病院循環器内科講師の皆月隼氏は、国際共同二重盲検並行群間ランダム化優越性試験SELECTの事後解析を実施し、AF既往の有無別にセマグルチドが主要心血管イベント(MACE:心血管死、心筋梗塞、脳卒中)およびAFイベント(AF既往あり例は再発、なし例は新規発症)に及ぼす影響を検討。結果を第34回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2026、7月16~18日)で報告した。・・・ PCIと心リハは「競合」ではなく「補完」 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)技術の進歩により、従来は治療困難とされてきた高度石灰化病変や慢性完全閉塞(CTO)病変などにも対応が可能となった。その一方で、「治療可能な病変=治療すべき病変とは限らない」という新たな課題が浮上している。特に高齢者や複雑病変を有する高リスク症例では、手技の成功と患者の予後・QOLの改善が必ずしも一致しないケースがある。聖隷浜松病院(静岡県)循環器科・心血管カテーテル治療科主任医長の齋藤秀輝氏は、第34回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2026、7月16~18日)で、「高齢・複雑病変では『PCIが患者にとって最適な治療戦略か』という視点が重要。PCIと心臓リハビリテーション(心リハ)は『競合』ではなく『補完的』治療と捉えることが、Patient-centered PCIの実現につながる」と訴えた。・・・ PCSK9阻害薬、患者負担を抑えるには 動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の二次(再発)予防における脂質管理の新たなコンセンサスでは、LDLコレステロール(LDL-C)の目標値が急性冠症候群(ACS)で55mg/dL未満、慢性冠症候群(CCS)では70mg/dL未満に引き下げられるなど、厳格管理の重要性が指摘されている(J Atheroscler Thromb 2026; 33: 336-364)。こうした中、PCSK9阻害薬は強力なLDL-C低下作用を持つ治療選択肢となりうる一方、導入の障壁として高額な薬剤費が課題となっている。大和橿原病院(奈良県)内科部長の井上文隆氏は、自施設の虚血性心疾患患者を対象にPCSK9阻害薬エボロクマブまたはインクリシラン導入後のLDL-C低下効果について薬剤費を含めて比較検討。結果を第34回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2026、7月16~18日)で報告した。・・・ 日本人ACS患者もLDL-C 40未満を目指すべき 慢性冠動脈症候群(CCS)と比べ、急性冠動脈症候群(ACS)は心血管イベント再発リスクが高く、LDLコレステロール(LDL-C)管理の重要性が指摘されている。他方、欧州心臓病学会(ESC)など欧米のガイドライン(GL)では、超高リスク患者におけるLDL-C目標値をCCSとACSのいずれも55mg/dL未満としている。国立循環器病研究センター心臓血管内科冠疾患科医長の片岡有氏は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した冠動脈疾患(CAD)患者を対象に多施設共同観察研究を実施し、CCSおよびACSにおける達成LDL-C値に応じた心血管イベントとの関連を検討。その結果、「日本人ACS患者ではLDL-Cを40mg/dL未満に低下させることで、CCS患者よりも大きな便益が得られる可能性がある」と第34回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2026、7月16〜18日)で報告した。・・・ 2026年開催学会レポート一覧に戻る