脳梗塞:この基準ならば機械的血栓除去を
N Engl J Med(2020; 383: 252-260)に急性虚血性脳卒中(Acute Ischemic Stroke)の総説(Clinical Practice)がありました。世界最新の脳梗塞総説です。
著者は米・ノースカロライナ医科大学の神経科の先生ですが、カロライナって一体どういう意味だろうと調べたところラテン語のCarolus(男性形)、「自由な男」の女性形でした。なんと英語のCharlesと同じでした。
N Engl J MedやLancetは大きなブレイクスルー(breakthrough)が起こり標準治療となり始めると必ず総説を組んでくれます。
「脳梗塞初療で暗記すべきコア中のコア」は次の6点です。怒濤の反復を!
- 低血糖を確認して「単純脳CT」で脳出血を除外せよ!
- アルテプラーゼ投与は発症4.5時間以内、NIHSS≧6点
- 機械的血栓除去の画像診断はCTAかMRAだけで可
- 機械的血栓除去はICかMCA(M1)血栓で発症≦6時間、NIHSS≧6、ASPECTS≧6のとき
- 発症6~16時間でNIHSS≧6、発症6~24時間でNIHSS≧10はアルテプラーゼ考慮
- 既に発症24時間経過の場合はアスピリンか、DAPT 21日間開始
トップジャーナルの総説をフォローしていれば田舎にいても知識は常に世界最先端とすることができます。昔は都の流行についていくのがいかに困難であったか『更科日記』を読むとよく分かります。数年前、『更科日記』の舞台、千葉県市原を訪ねました。シンゴジラが出現した東京湾のトンネルを通って伊豆から数時間でした。
「東路の道の果てよりも、なほ奥つ方に生ひ出でたる人、いかばかりかはあやしかりけむを」で始まるのですが、常陸国と上総国の受領(ずりょう、長官)だった菅原孝標(すがわらたかすえ)の女(むすめ、名前は分からない)が10歳から50歳までの思い出を綴ったエッセーです。
母や姉から光源氏の話を聞き、『源氏物語』を読みたくて読みたくてたまらないのですがかないません。『源氏物語』成立が1004年から1012年、孝標女(たかすえむすめ)の帰京が1020年ですから出版から既に10年は経っています。大ベストセラーであっても1つ1つ書き写すのですから、そう簡単に手に入るものではありません。
「京に疾(と)く上げ給ひて、物語の多く候ふなる、ある限り見せ給へ。」と、薬師仏にお祈りまでしますが、ついに今から千年前の1020年、13歳のときに家族で京都に帰ることになります。
千葉、市原の国府の位置は現在、高台にある市原市役所辺りと推定されています。この近くに国分寺、国分尼寺跡もあり一部再建されています。高台の上からは東京湾の向こうに富士山が小さく見え千年前、菅原孝標女も日々こんな景色を見ていたのだなあと心の底から感動しました。ここを出て高台の下の「いまだち」(飯香丘八幡宮の辺り)で数日、旅の準備をしてから京都へと出発するのです。
『更級日記』によると寛仁4年(1020年)9月28日、市原を出発して苦労の末に12月24日京都に到着します。実に3カ月もかかったのには驚きです。今なら新幹線で半日です。 京の邸宅は現在の京都市中京区仲保利町塗師屋町から船屋町西部辺りの100m四方で、二条城の東、地下鉄烏丸御池(からすまおいけ)駅の近くです。日記には草木が生い茂り荒れ果てていたとありますが、現在は行ってみますと住居が立て込んだ都会です。
叔母がなんと櫃に入った『源氏物語』50余巻をプレゼントしてくれます。 「源氏を一の巻よりして、人もまじらず几帳の中にうち伏して昼は日ぐらし、夜は目のさめたるかぎり、火を近くともしてこれを見るよりほかのことなければ...」という具合いで、ほとんど今時のゲーマーです。
「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが...」
彼女が夢中になった源氏を現在もそのまま読むことができることにはつくづく感動します。
昔は「田舎の三年、京の昼寝」といって田舎と都会では随分情報量が違いました。現在はネット環境のお陰で田舎にいても都会に遅れるなんて思うことは全くなくなりました。
今回のN Engl J Med虚血性脳卒中の総説、 重要点は次の11点です。
- 脳卒中はまず血糖測定で低血糖否定。「単純脳CT」で脳出血否定!
- アルテプラーゼの3カ月後予後OR:3時間内投与1.75、3~4.5時間投与1.26。脳出血発生6.8%
- 発症4.5~9時間経過後のアルテプラーゼ投与は3カ月予後OR 1.61で効果あり
- DWIは不可逆的範囲(core)、PWI(T-max>6秒)との差がpenumbra(救済可能域)
- IC/MCA(M1)血栓で6時間内、NIHSS≧6、ASPECTS≧6のとき、機械的血栓除去OR 2.49
- 単純CTで中大脳動脈の梗塞範囲決定、ASPECTS≧6点で機械的血栓除去適応
- 機械的血栓除去の画像はCTAかMRAで十分。腎不全ではTOF-MRA(造影不要)を
- 機械的血栓除去はアルテプラーゼを併用せよ。吸引血栓除去も同等の効果(2019判明)
- 発症6~24時間でも機械的血栓除去は有効(2018年判明)
- 発症24時間経過後アスピリンまたは21日間DAPT使用。アルテプラーゼ投与時は24時間以後に
- 24時間心モニター、SpO2≧94%、38℃以上熱源精査・解熱、BG 140~180、BP≦180/105
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仲田 和正(なかた かずまさ)
西伊豆健育会病院病院長。1978年に自治医科大学卒業、静岡県立中央病院(現静岡県立総合病院)全科ローテート研修、1980年に浜松医科大学麻酔科研修(4~9月)、静岡県国民健康保険佐久間病院外科・整形外科。1984年に自治医科大学整形外科、大学院、1988年に静岡県島田市民病院整形外科、1991年に静岡県西伊豆病院整形外科。
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