ドクターズアイ 倉原優(呼吸器)

新たな自己炎症性疾患「VEXAS症候群」

高率に肺病変を合併

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研究の背景:2年前に提唱された再発性多発軟骨炎を含む症候群

 男性の再発性多発軟骨炎症例の大部分で、末梢血白血球または骨髄組織由来のゲノムDNAにユビキチン活性化酵素(UBA)1遺伝子の変異〔p.Met41Thr (c.122T>C)、p.Met41Val (c.121A>G)、p.Met41Leu (c.121A>C)、c.118-1G>C〕が検出される。これらの症例のほとんどが再発性多発軟骨炎やSweet症候群などの炎症性疾患や、骨髄異形成症候群や多発性骨髄腫などの血液疾患と重複していることが分かっている。

 UBA1は、蛋白質の翻訳後修飾のプロセスであるユビキチン化の開始に必須である。UBA1遺伝子変異を伴う自己炎症性疾患として、VEXAS(vacuoles、E1enzyme、X-linked、autoinflammatory、somatic)症候群という病名がついている(N Engl J Med 2020; 383: 2628-2638Ann Rheum Dis 2021; 80: 1057-1061)。疾患概念の提唱から約2年がたつので「新たな」というタイトルにはいささか語弊があるが、私の周囲では知名度は低い状況である。

 これまで謎の病態だった胸水やC反応性蛋白質(CRP)高値例の一部に、こうした症例が紛れている可能性があり、疾患概念だけでも知っておきたいところである。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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