喀血へのトラネキサム酸、静注か吸入か
研究の背景1:喀血治療のエビデンスは「トラネキサム酸静注一択」
呼吸器内科診療において、喀血は日常茶飯事である。特に気管支拡張症や肺非結核性抗酸菌症を合併している場合、毎日のように血痰を呈する患者もいる。
投与そのものにエビデンスがある製剤は、「トラネキサム酸静注一択」と言っても過言ではない。カルバゾクロム(商品名アドナ)もしばしば併用されるが、これについてはランダム化比較試験(RCT)などのエビデンスが乏しい状況であり、「トラネキサム酸と比べておまじない程度かもしれない」と研修医に伝えることもある。
本当にRCTはないのだろうかと思って「carbazochrome」で文献検索を試みたが、少なくとも喀血に関する妥当な臨床試験は存在しなかった。外傷や整形外科領域で、トラネキサム酸と併用することで手術に関連する出血を減らすという報告はある(Cureus 2022 ; 14: e22018、Orthop Traumatol Surg Res 2022 ; 108: 103092)。
トラネキサム酸静注については、外傷領域で出血を減らすことで死亡率も改善させるというエビデンスがある(J Clin Med 2021 ; 10: 1030、J Trauma Acute Care Surg 2021 ; 90: 901-907)。
日本国内の診断群分類包括評価(DPC)入院患者データベースを用いた後ろ向き研究において、傾向スコア解析でマッチングしたコントロール群とトラネキサム酸群の静注が比較されている(Crit Care 2019 ; 23: 347)。それによると、コントロール群よりトラネキサム酸群は有意に院内死亡率が低く(11.5% vs. 9.0%、リスク差-2.5%、95%CI -3.5~-1.6%)、入院期間が短い(18±24日 vs. 16±18日、同-2.4日、-3.1~-1.8日)ことが示された(表)
表. トラネキサム酸の効果

(Crit Care 2019; 23: 347)
以上のエビデンスから、現在の喀血治療のエビデンスとしては、生理食塩水にトラネキサム酸とおまじないのカルバゾクロムを混注して、安静にしてもらうことが多く、これで喀血が治まらなければ気管支動脈塞栓術に踏み切ることになる。
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倉原 優 (くらはら ゆう)
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。










