ドクターズアイ 須田竜一郎(消化器外科)

術前放射線は不要?局所進行直腸がんの新潮流

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:術前放射線療法が過剰治療となっている可能性に着目

 切除可能な局所進行直腸がんでは、手術・放射線療法・化学療法が三大治療法とされており、これらを駆使することで「完治」の可能性が高まる。特に放射線療法は、術前に化学療法と併用することで骨盤内の局所再発率を大幅に低下させてきた実績があり、欧米では30年以上の間、揺るぎない標準治療として定着している。しかしながら、骨盤への放射線照射は、膀胱、腸、性機能などに、短期的・長期的な問題を引き起こすリスクがある。

 今回は、米・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのDeborah Schrag氏らが主導し、今年(2023年)の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された第Ⅱ/Ⅲ相ランダム化比較試験PROSPECTについて紹介したい。本試験の内容は、N Engl J Med(2023; 389: 322-334)に掲載されている。

 この試験は、「局所進行直腸がん患者に対する標準治療である術前放射線療法と化学療法の併用療法を、術前化学療法に置き換えることができるかどうか」を検証したものである。「術前化学療法単独でがんの治療効果が変わらないのであれば、術前放射線療法は省略できるのではないか?」という仮説に基づいてデザインされた。

 試験結果は、術前化学療法を受けた介入群と、標準治療群とで治療成績に差がなかったという。治癒率を損なうことなく放射線療法を省略することができるのであれば、放射線毒性を回避することによって患者のQOLを改善させられる可能性がある。

須田 竜一郎(すだ りゅういちろう)

君津中央病院消化器外科部長。千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学。2001年藤田保健衛生大学卒。2001年より国立国際医療研究センターレジデント。2007年より同センター下部消化管外科技官。2018年より千葉大学病院第一外科を経て、2020年より現職。専門は下部消化管。日本外科学会指導医、日本大腸肛門病学会指導医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器外科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本臨床肛門病学会技能指導医、日本腹部救急医学会評議員。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする