精神疾患にプラセボ、最もよく効く疾患は?
研究の背景:製薬企業を苦しめるプラセボ効果
統合失調症に有効な抗精神病薬は、(難治性統合失調症にも有効なクロザピンが作用機序不明であることを除けば)全てドパミンD2受容体阻害作用を持つ薬である。そのような中、trace amine-associated receptor 1(TAAR1)アゴニストという、全く違う作用を持つ化合物(ulotaront)の統合失調症に対する有効性が第Ⅱ相試験において示されたと報告され、大いに期待されていた(N Engl J Med 2020; 382: 1497-1506)。
ところが、ulotarontの第Ⅲ相試験で、主要評価項目を達成できなかったとのニュースが流れ、関係者に衝撃を与えた。この試験では、新型コロナパンデミック前に登録した患者では、第Ⅱ相試験と同様の傾向を示していたが、新型コロナ以後のデータが加わった結果、なんと実薬の低用量群よりもプラセボの方が有効、という驚くべき結果となってしまったのである。
そのせいだけではないだろうが、ulotarontを開発した住友ファーマ社は2024年度3月期に3,000億円を超える赤字を計上し、苦境にある。あらためて精神科領域の臨床試験の怖さを思い知らされた事件であった。
類似の現象は以前にも報告されており、抗うつ薬の臨床試験で登録患者数が伸びないため、大々的に新聞広告を打ったところ、登録患者は増えたが、その後の解析で、新聞広告前には実薬がプラセボに勝っていたにもかかわらず、新聞広告後、結果が逆転してしまい、実薬の有効性が検証できなかった、という事件があった。
このように、向精神薬の開発を行う製薬企業を苦しめるプラセボ効果であるが、最近、精神疾患ごとのプラセボへの反応の大きさを比較したメタ解析の結果が報告された(JAMA Psychiatry 2024; 81: 757-768)。
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加藤 忠史(かとう ただふみ)
順天堂大学精神医学講座主任教授。1988年東京大学医学部卒業、同病院で臨床研修、1989年滋賀医大精神医科大学講座助手、1994年同大学で医学博士取得、1995年米・アイオワ大学精神科に留学(10カ月間)。帰国後、1997年東京大学精神神経科助手、1999年同講師、2001年理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームリーダー、2019年理化学研究所脳神経科学研究センター副センター長を経て、2020年4月から現職。
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