研究の背景:不確実性を引き受け、失敗は内面化される職業 外科診療とは、不確実性と向きあうことでもある。いかに熟練し、高水準の医療を尽くしても、一定の確率で合併症は生じる。これは避けては通れない「職業的宿命」といえる。さらに、防ぎえたエラーに遭遇することもある。理論的には区別できる両者も、術者の心の中では明確には分離されない。 このような、予期せぬ有害事象や医療エラーに関与した医療従事者が、心理的・心身症的な否定的影響を受ける状態、すなわち「セカンド・ビクティム症候群(Second Victim Syndrome; SVS)」については、長らく個人の精神力やレジリエンスの問題とされ、研究として焦点が当たることは少なかった。 今回紹介する、British Journal of Surgeryに掲載された最新のシステマティックレビューおよびメタ解析は、外科医におけるSVSの実態を定量的に統合した研究である。数千人規模の外科医データを統合したこの研究は、個々の体験談や単施設の印象論を超え、医療の質を左右する「構造的問題」としてのSVSを浮き彫りにしている(Br J Surg 2025; 113: znaf258.) 。