ドクターズアイ 須田竜一郎(消化器外科)

虫垂切除は潰瘍性大腸炎治療の選択肢になりうるか

— COSTA試験から考える、外科の新しい関わり方

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研究の背景:なぜ今、虫垂切除がUCで語られるのか


 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、この10年で大きく変わってきた。生物学的製剤や低分子薬が使えるようになり、以前より多くの患者で炎症を抑えられるようになった一方で、10~30%の患者は最終的に大腸全摘を必要とし、難治例が存在することも確かである。そうした中で、近年あらためて注目されているのが虫垂である。

 虫垂切除歴とUC発症の逆相関は1980年代後半に初めて報告された。その後の症例対照研究でもこの観察は繰り返し確認され、特に20歳未満での虫垂炎による虫垂切除がUC発症リスクを有意に低下させることが示されてきた(Am J Gastroenterol2017; 112: 1311-1319)。

 その後、虫垂がUCの病勢になんらかの形で関わっている可能性は長年議論の対象であったが、2025年のLancet Gastroenterol Hepatol2025; 10: 550-561) に掲載されたACCURE試験で、寛解期UC患者に対する虫垂切除追加が、標準治療単独より寛解維持に有利であることがランダム化比較試験で初めて実証された(1年再燃率:36% vs. 56%、相対リスク0.65)。

 しかしながら、ACCURE試験は寛解維持を問う試験であり、生物学的製剤治療後も活動性が残る患者の寛解導入を直接比較したものではなかった。

 今回紹介するCOSTA試験は、そうした流れの中で、「生物学的製剤不応後の活動性UC患者において、虫垂切除は次の薬剤選択(JAK阻害薬)と比較して寛解導入の点で有効なのか」という、もう一歩踏み込んだ問いを扱った初の前向き比較研究といえる(Lancet Gastroenterol Hepatol 2026; 11: 190-203)。

須田 竜一郎(すだ りゅういちろう)

君津中央病院消化器外科部長。千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学。2001年藤田保健衛生大学卒。2001年より国立国際医療研究センターレジデント。2007年より同センター下部消化管外科技官。2018年より千葉大学病院第一外科を経て、2020年より現職。専門は下部消化管。日本外科学会指導医、日本大腸肛門病学会指導医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器外科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本臨床肛門病学会技能指導医、日本腹部救急医学会評議員。

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