ドクターズアイ 菅野義彦(腎臓内科)

先行領域に追いつく?腎細胞移植で腎機能低下を阻止

Hope for CKD、Next Frontier in CKD

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研究の背景:多くの領域で導入されつつある「自己細胞移植」、糖尿病性腎臓病で第Ⅲ相臨床試験

 春爛漫の腎臓病治療とはいえ、今回もわれながら能天気なサブタイトルを掲げたものである。

 誤解のないよう付言しておくと、このサブタイトルは私が考えたものではない。前編の「Hope for Kidney」は、今回紹介する臨床研究を行った米・Prokidney社が患者向けに提供しているサイト名で、後編の「Frontier in CKD」は今回取り上げる論文と同時にClin J Am Soc Nephrolに掲載されたEditorialのタイトルである(Clin J Am Soc Nephrol 2026年4月14日オンライン版)。

 Editorialの著者であるPeter Rossing教授は、デンマーク・コペンハーゲン大学の臨床医として糖尿病合併症に関する多くの大規模臨床試験に携わってきた大家である。同社との利益相反(COI)もないようで、SGLT2阻害薬などの臨床成績を熟知する同氏が、今回紹介する糖尿病性腎症患者に対する腎自己細胞療法に寄せる期待は非常に高い。

 一方、論文の著者であるBorut Čižman氏は、スロベニア・リュブリャナ大学で学位取得後、同大学医療センターでの臨床トレーニングを経て渡米し、米・ペンシルベニア大学の助教までアカデミックキャリアを築いた。退職後、現ヴァンティブやグラクソ・スミスクラインでの研究職を歴任しつつ、創薬系スタートアップ企業でも活躍している。こうした多角的なキャリア構築は今後、わが国でも増えるであろう医師のキャリアパスの1つといえよう。

 前置きが長くなったが、今回紹介する論文は、多くの領域で導入されつつある「自己細胞移植」について、糖尿病性腎臓病患者を対象に第Ⅲ相臨床試験まで進めたという、非常にエポックメイキングな内容である。

Čižman B, Butler EL, Stavas J, Prakash R, Saad T, Silva A, Wooldridge T, Aqeel A, Yan H, Barysauskas CM, Culleton B. A Randomized Clinical Trial of Kidney Autologous Cell Therapy in Diabetic Kidney Disease. Clin J Am Soc Nephrol 2026年1月2日オンライン版

 細胞移植治療といえば、既に確立された造血幹細胞移植やキメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法の他、神経細胞移植(パーキンソン病・脊髄損傷)、膵島移植(1型糖尿病)、さらには人工多能性幹細胞(iPS)細胞由来の移植など、各領域で最先端の研究が進行中だ。果たして腎臓領域は、これら先行する領域に一気に追いつけるのか。そして、SGLT2阻害薬やレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬を中心に「Fantastic Infinity」となりつつある現在の腎臓病治療に、新たな風穴を開けることになるのだろうか。

菅野 義彦(かんの よしひこ)

東京医科大学腎臓内科学分野主任教授

1991年慶應義塾大学医学部卒業。同大学院進学後、米国ジョージワシントン大学、国立衛生研究所に留学。埼玉医科大学腎臓内科、医学教育センター、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て2013年より現職。2018年より大学病院副院長(医療安全・危機管理)、2024年より大学副学長補佐を務める傍ら2021年システムデザインマネジメント学修士、2025年教育学修士を取得。腎臓・高血圧・透析領域のみならず感染症、老年医学、医学教育などの専門資格を有する。また臨床栄養学に関するオピニオンリーダーの1人でもあり、日本臨床栄養学会、日本病態栄養学会の理事を務める。

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