妊娠中のスタチン使用をめぐる新たな議論
FH女性の脂質管理はどこへ向かうのか
研究の背景:妊娠女性へのスタチン継続、欧米で進む方針転換
近年、家族性高コレステロール血症(FH)をはじめとする脂質異常症患者に対する診断率や治療率の向上に伴い、既にスタチン治療が開始され、妊娠可能年齢を迎える女性が増加している。他方、スタチンは長らく妊娠期間および授乳期間中は禁忌とされているため、妊娠を希望する女性では治療中断を余儀なくされることが少なくない。ノルウェーとオランダの共同研究では、女性FH患者では子供の数が多いほどスタチン中断期間が長いことが報告され、中には14年間にも及ぶ症例が確認された(Atherosclerosis 2021; 335: 8-15)。
しかし、2021年に米食品医薬品局(FDA)はスタチンの妊娠禁忌表示を撤廃し、「一律禁止」から「症例ごとの利益・不利益評価」へと方針転換を行った(FDA医薬品安全性情報)。具体的には、「重症FHや動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)二次(再発)予防例のようなハイリスク患者では、患者-医師間でそのベネフィットとリスクを相談して、スタチン内服を考慮してもよい」とされた。
また、欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインでもFHやASCVD既往患者において妊娠中のスタチン継続を考慮しうる(ただしClassⅡb、Level C)との記載が加わった(Eur Heart J 2025; 46: 4359-4378)。
妊娠中のスタチン使用の可否は、主に胎児に対する影響について議論されてきたことが多いが、既にスタチンを内服している母親のスタチン中断による心血管リスクについてはエビデンスが不足していた。今回紹介する論文(Circulation 2026; 153: 504-515)は、「妊娠中にスタチンを中止することは本当に安全なのか」、「妊娠初期のスタチン継続が胎児に及ぼす影響はあるのか」という疑問に答えようとした観察研究である。
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