ドクターズアイ 山田悟(糖尿病)

週末の「寝だめ」は意味があるかも!

多忙な医師に朗報? インスリン感受性改善の可能性

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする

研究の背景:「寝だめ」は否定的に扱われてきた

 米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)は2006年以降、合同で薬物療法のアルゴリズムを提唱し、定期的に修正している。その最新版が2022年版(Diabetes Care 2022; 45: 2753-2786)であり、それ以前の「第一選択薬はメトホルミンで、それ以外が第二選択薬になる」という概念が払拭され、臓器保護を考えるのであれば、第一選択薬はSGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬とされるようになった。

 そして、もう1つ2022年版で私が注目したことは、睡眠が運動と同格のレベルで血糖管理に重要な因子として取り上げられたことであった。これまでであれば、exercise(運動)であるとか、physical activity(身体活動)として治療法が語られていた図(Importance of 24-hour physical behaviors for type 2 diabetes)において、〔タイトルもphysical behaviors(身体の振る舞い)の用語が当てられ〕有酸素運動(Sweating, Stepping)、レジスタンス運動(Strengthening)、坐位行動中断(Sitting/Breaking up prolonged sitting)とともに睡眠(Sleep)の記載が入ったのである。

 そこでは、①量:長時間(8時間超)と短時間(6時間未満)の睡眠はHbA1cに悪影響を与える、②質:不眠、睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群などによって睡眠の質が安定しないことは血糖管理を悪化させる、③時間タイプ:夜型(夜遅く寝て、朝遅く起きる)の生活は朝型(早寝早起き)に比較して不活動や血糖管理悪化に感受性が高い―といったことが記載されている。

 わが国でも厚生労働省の『健康づくりのための睡眠ガイド2023』において、6時間以上の睡眠が推奨されるとともに、5時間未満ではメタボリックシンドロームのリスクが(Sleep Med 2017; 39: 87-94)、6時間未満では心血管疾患(Scand J Work Environ Health 2011; 37: 411-417)や全死亡(Sleep Med 2017; 32: 246-256)のリスクが上昇することが記載され、適正な睡眠時間を確保するための適正な労働時間管理の重要性(Sleep 2007; 30: 1085-1095J Occup Health 2013; 55: 307-311)が指摘されている。

 そして、平日の睡眠不足(睡眠負債)を休日に取り戻そうと長い睡眠時間を確保する「寝だめ」についてはその効果は限定的で、平日の睡眠不足の人同士を比較したところ、休日に2時間以上「寝だめ」をする群では「寝だめ」をしない群より死亡リスクが高かったという論文(Sleep Biol Rhythms 2023; 21: 409-418)を引用して否定的に取り扱っている

 そんな中、平日の睡眠時間および週末の寝だめ時間と推定糖処理率(estimated glucose disposal rate;eGDR)の関係性を検討し、やはり2時間以上の寝だめをしている人は2時間未満の人よりもeGDRが低い一方で、平日の睡眠時間が短い場合には、(私の解釈では)2時間以上の寝だめをすることでeGDRを改善できることを示す論文が発表された(BMJ Open Diabetes Res Care 2026; 14: e005692)。

 私自身、平日の睡眠時が必ずしも6時間を確保できておらず、週末に2時間以上の寝だめをしていることもあり、きっとそういう生活の医療従事者も多いと考え、ご紹介したい。

 なおeGDRは、2024年に提唱されたインスリン感受性を示す新たな指標でCardiovasc Diabetol 2024; 23: 194)、心腎代謝リスク(Int J Med Sci 2025; 22: 3779-3788)に加え、全死亡リスクや心血管死リスクとの関連性が報告されるなど(Diabetol Metab Syndr 2026; 18: 108)、注目されている。


山田 悟(やまだ さとる)

1994年、慶應義塾大学医学部を卒業し、同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て、2002年から北里研究所病院で勤務。 現在、同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら、2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする