サッカーW杯に誓う「怪我はスポーツに付き物」としない
スポーツ医学の新たな視点「神経筋の準備」
研究の背景:怪我1つで選手のキャリアもチームの運命も変わる
国際サッカー連盟(FIFA)のワールドカップ(W杯)は、世界最高峰のプレーを競う舞台である。
しかし、その舞台に立てるかどうかを決めるのは、実力だけではない。メンバー発表の瞬間から、選手たちの運命を左右する「怪我」との戦いが始まっている。
今回の日本代表でも、南野拓実選手、三笘薫選手は残念ながら大きな怪我により手術を受け、大会の舞台に立つことはできなかった。一方で、前十字靭帯(ACL)損傷を経験し、その後も膝のトラブルに長く苦しんできた冨安健洋選手は代表入りを果たした。さらに、久保建英選手や鎌田大地選手も重症のハムストリング肉離れを乗り越え、再びピッチへ戻ってきた。
怪我1つで、選手のキャリアも、チームの運命も、大会そのものも変わる。
スポーツドクターとして、私はこれまで「怪我をしてしまった選手を、いかに早く、そして再発させずに競技へ戻すか」に全力を注いできた。
手術技術を磨き、術後リハビリテーションを工夫し(関連記事「『筋力は回復したのにリハビリ停滞』の正体」)、多血小板血漿(PRP)療法をはじめとするバイオロジカル治療も取り入れながら(関連記事「ACL再建後のPRP療法は本当に『意味がない』のか?」)、少しでも良い状態でピッチへ戻す方法を追い求めてきた。
しかし、ふと立ち止まることがある。
われわれは、怪我を治すことばかり考えてはいないだろうか。
もちろん、怪我をしてしまった選手に対して、われわれの英知を集結して最短で、かつ再発させずに競技へ戻すことは重要である。
しかし、本当に目指すべきなのは、怪我をしてから最善を尽くすことではなく、そもそも怪我をさせないことではないのか。
「怪我はスポーツに付き物」。この言葉は半分正しく、半分間違っている。
避けられない怪我は確かにある。しかし、防げる可能性のある怪我まで、「付き物」という言葉で片付けてよいのだろうか。
では、何を予防すればよいのか。
筋力なのか。
柔軟性なのか。
疲労なのか。
あるいは、もっと他に見落としているものがあるのではないか。
今回のW杯でも、久保選手がオランダ戦で相手選手と接触して負傷した場面は、多くの方の記憶に残っているだろう。怪我というと、どうしてもあのようなコンタクトプレーを思い浮かべがちである。
しかし、ACL損傷は少し事情が異なる。
むしろ、誰ともぶつかっていない場面で起こることが少なくない。
今回紹介する論文(Orthop J Sports Med 2026; 14: 23259671251400766)は、その問いに対する重要なヒントを与えてくれる。
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