ドクターズアイ 菅野義彦(腎臓内科)

「採血前の食事」によって血清Cr値が変動する!

数値の解釈に悩む

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研究の背景: 血清Cr値の変動をどう説明する?

 腎臓内科の日常診療で、患者は血清クレアチニン(Cr)値やそれに基づく推算糸球体濾過量(eGFR)に一喜一憂したり、健康診断で異常と言われて私たちの外来を訪れたりしている。こうした患者の多くに対して腎臓内科医は、Crは筋肉のゴミだから、筋肉を急に使うと上がることがありますよ」「筋肉量が多い方は高めに出ますよ」「血清Cr値は濃度だから夏の脱水で高めに出ますよ」なんてことをしたり顔で話して、安心してもらってお引き取りいただく。

 今回もう少し患者に知ったかぶりをできる格好の研究が報告された。なんと血糖や脂質の数値のように「採血前の食事」によって血清Cr値が変動するというものである(J Am Soc Nephrol 2026年6月18日オンライン版)。

 これまで論文の著者を紹介する上で、ネットサーフィン(今はなんていうのだろう?)がある程度必要だったが、今回は紹介の必要もない著名人で、血液透析における標準化透析量(Kt/V)や透析効率の評価における世界的な名著『Handbook of Dialysis』の著者として知られる、米・イリノイ大学シカゴ校のJohn T. Daugirdas教授である。今でこそ初学者が透析療法を学習するための、分かりやすく読みやすい書籍(『透析の話をする・聞く前に読む本(電子版のみ)』文光堂)や動画は無数にあるが、筆者が入局した30年ほど前にはDaugirdas先生の『Handbook of Dialysis』とその翻訳(『臨床透析ハンドブック』メディカル・サイエンス・インターナショナル)、信楽園病院腎センターの『透析療法マニュアル』(日本メディカルセンター)以外はなく、われわれは前者を使っていた。

 『Handbook of Dialysis』は、日本と異なる環境で透析療法が行われている米国での状況を紹介する書籍で、まだ理屈も理解できない透析療法を学ぶのは本当に大変であった。後年、この教科書の翻訳をお手伝いするご縁に恵まれたが、担当したのは経験したことがない腹膜透析カテーテル挿入の章であり、とにかくDaugirdas先生の同書には苦労した記憶しかない。

菅野 義彦(かんの よしひこ)

東京医科大学腎臓内科学分野主任教授

1991年慶應義塾大学医学部卒業。同大学院進学後、米国ジョージワシントン大学、国立衛生研究所に留学。埼玉医科大学腎臓内科、医学教育センター、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て2013年より現職。2018年より大学病院副院長(医療安全・危機管理)、2024年より大学副学長補佐を務める傍ら2021年システムデザインマネジメント学修士、2025年教育学修士を取得。腎臓・高血圧・透析領域のみならず感染症、老年医学、医学教育などの専門資格を有する。また臨床栄養学に関するオピニオンリーダーの1人でもあり、日本臨床栄養学会、日本病態栄養学会の理事を務める。

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