ドクターズアイ 須田竜一郎(消化器外科)

早期直腸がんの局所切除後、追加TMEは本当に必要か

TESAR試験が示した臓器温存治療の可能性

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研究の背景:局所切除後に残る「リンパ節転移リスク」

 早期直腸がんでは、内視鏡切除や経肛門的局所切除によって、原発巣を低侵襲に切除できる症例が増えている。一方、切除後の病理組織学的検索でリンパ節転移危険因子が明らかになった場合、その後の治療方針が問題となる。局所切除では直腸間膜内のリンパ節は郭清されない。このため、高リスクpT1がんや一部のpT2がんでは、潜在的なリンパ節転移を制御する目的で、total mesorectal excision(TME)を追加することが標準的な治療とされてきた。

 しかし、直腸を切除するTMEは患者にとって大きな代償を伴うものである。手術の安全性は高まったといえど、縫合不全などの短期合併症リスクは依然としてゼロではない。さらに、排便・排尿・性機能障害は永続的な生活面への影響を生じる場合もあり、腫瘍の局在によっては永久的な人工肛門を受け入れる必要がある。こうした場合、人工肛門自体は決して忌避すべきものではなく、むしろ排便障害を回避して高いQOLを維持するための前向きな選択肢になりうるものであることを強調したいが、そうした機能的変化を含めた「これまで当たり前と思っていた生活の変化」が、患者の心身に負担を強いることは事実である。

 そして何より問題なのは、病理学的リスク因子を有していても、実際に切除標本でリンパ節転移が陽性となる患者は少数にとどまるという事実である。裏を返せば、少数の転移リスクを完全に排除するために、結果としてリンパ節転移のない大半の患者にまで追加TMEが行われることが、ある意味で許容されてしまっているのである。

 そこで以前から、局所切除後に追加TMEの適応と判断された症例に化学放射線療法を追加することで、直腸を温存しながら潜在的リンパ節転移を制御できないかという考え方が検討されてきた。しかし、これまでのエビデンスは観察研究が中心であり、追加TMEと直接比較したランダム化比較試験(RCT)はなかった。

 今回紹介するTESAR試験は、高リスクpT1または低リスクpT2直腸がんの局所切除後に、術後化学放射線療法と追加TMEを直接比較した初の第Ⅲ相多施設RCTである(Lancet Gastroenterol Hepatol 2026; 11: 557-569.)。

須田 竜一郎(すだ りゅういちろう)

君津中央病院消化器外科部長。千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学。2001年藤田保健衛生大学卒。2001年より国立国際医療研究センターレジデント。2007年より同センター下部消化管外科技官。2018年より千葉大学病院第一外科を経て、2020年より現職。

専門は下部消化管。日本外科学会指導医、日本大腸肛門病学会指導医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器外科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本臨床肛門病学会技能指導医、日本腹部救急医学会評議員。

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