ドクターズアイ 岩田健太郎(感染症)

B型肝炎、治癒の時代が到来か

「機能的治癒」を適応とする新薬、世界に先駆け登場

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(© Adobe Stock ※画像はイメージです)

研究の背景:慢性B型肝炎はいまだ治癒困難

 大多数の感染症は急性疾患だが、慢性化するものもある。B型肝炎ウイルス(HBV)感染も急性肝炎と慢性疾患の2パターンがある。

 世界には2億4,000万人の慢性HBV感染者がおり、毎年約110万人の命が奪われている。いまや世界三大感染症といわれる結核、マラリア、AIDSに匹敵する、あるいはそれ以上の死亡者を出しているのだ。

 慢性化したB型肝炎は「治癒」するのが難しいとされてきた。かつてはインターフェロンが治療の主流であり、半減期の長いペグインターフェロンがこれに次いだ。しかし、副作用は多く、治癒率も低かった。次いでラミブジン、テノホビル、アデホビル、エンテカビルといった抗ウイルス薬が導入されたが、「治癒」に至ることはまれで、服用継続が必要だった。

 慢性B型肝炎の「機能的治癒(functional cure)」は、血中HBV DNAが定量下限(lower limit of quantification;LLOQ)未満で、かつB型肝炎表面抗原が消失(0.05IU/mL未満)した状態が、治療終了後少なくとも24週間続くことと定義されている。B型肝炎表面抗体(HBs抗体)陽性化の有無は問わない。HBsAg喪失はHBV DNA抑制のみの場合よりもより良好な臨床アウトカムと関連するが、現在承認されている治療ではこれを達成することはまれである。

 今年(2026年)8月24日、ベピロビルセンナトリウム(商品名ヒブサーゴ、以下、ベピロビルセン)がHBV持続感染における機能的治癒を適応として日本における製造販売承認を取得した。世界で初めての承認だ。同薬は非結合型アンチセンス・オリゴヌクレオチドで、全てのHBV転写産物をターゲットとしている。HBV mRNAやpgRNAに結合し、蛋白質合成を阻害する「核酸医薬」である。直接的な抗ウイルス作用だけでなく、サイトカイン誘導や免疫細胞活性化など、免疫反応を賦活化させる作用もある。

 このベピロビルセンが機能的治癒をどのくらいもたらすかを吟味したのが、今回紹介する臨床試験である。

Hou J, et al. Phase 3 Results of Bepirovirsen Treatment for Chronic Hepatitis B Virus Infection. N Engl J Med 2026; 394: 2395-2406.

岩田 健太郎(いわた けんたろう)

神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より現職。著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。

岩田 健太郎
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