ドクターズアイ 小島淳(循環器)

空気を換えると血圧が下がる?

HEPAフィルターで検証したクロスオーバーRCT

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研究の背景:大気汚染への曝露と血圧上昇の関連

 高血圧診療では、減塩、運動、減量、節酒、禁煙といった生活習慣への介入が基本である。しかし、われわれが吸っている「空気」について、診察室で尋ねる場面を目にしたことはない。

 大気汚染、特に微小粒子状物質(PM2.5)は、心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死亡と関連することが多数の疫学研究で示されてきた。短期曝露でも、自律神経バランスの変化、血管内皮機能障害、酸化ストレス、全身性炎症などを介して血圧を上昇させる可能性がある。血圧の上昇幅がわずか数mmHgでも、集団全体では心血管イベントの増加につながりうる。したがって、曝露を減らすことができれば、薬剤とは異なる経路から血圧を改善できるかもしれない。

 屋外の大気環境を個人の努力だけで改善することは難しい。一方、人は1日の大半を屋内で過ごしており、屋外由来の粒子も窓や建物の隙間を通じて室内へ侵入する。そこで現実的な対策として注目されるのが、高効率微粒子捕集(high-efficiency particulate arrestance:HEPA)フィルターを備えた可搬型空気清浄機である。

 これまでにも空気清浄機による降圧効果を検討した介入研究はあったが、多くは少人数で、参加者の外出や調理を制限するなど実生活への一般化に課題があった。また、大気汚染濃度が比較的低い地域でも効果が得られるか、誰が最も恩恵を受けるかは十分に明らかでなかった。

 今回紹介する論文は、交通量の多い幹線道路の近隣に住む成人を対象に、HEPAフィルターを備えた空気清浄機が、実生活の条件を保ったまま血圧を低下させるかを検証したものである(J Am Coll Cardiol 2025; 86: 577-589)。

小島 淳(こじま すなお)

桜十字健康医科学研究所エグゼクティブディレクター、熊本大学客員教授

1993年熊本大学医学部卒業後、循環器内科に入局し、国立循環器病研究センターで臨床・研究に従事。熊本大学病院勤務を経て2006年に医学博士を取得。2018年川崎医科大学総合内科学主任教授、2020年熊本大学客員教授、2021年より桜十字八代リハビリテーション病院副院長、2026年より桜十字健康医科学研究所エグゼクティブディレクターを務める。日本内科学会、日本循環器学会、日本心臓病学会、日本超音波医学会、日本脈管学会、日本救急医学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本痛風・核酸代謝学会など多数の専門医資格を有し、学術賞受賞や各種ガイドライン策定にも参画。研究は循環器内科学を基盤に、大気汚染と循環器疾患、尿酸代謝と心血管イベントの関連を中心とした大規模臨床研究・疫学解析を推進し、「医学と環境」を軸に国際的に成果を発信している。

小島 淳
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