ドクターズアイ 岩田健太郎(感染症)

感染性心内膜炎の治療はテーラーメード化できるか

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(© Adobe Stock ※画像はイメージです)

 感染性心内膜炎(IE)は診断が遅れやすく、予後も悪くなりがちで、抗菌薬治療も長期にわたる。しかし、至適治療期間についてはエビデンスが乏しい。左心系IEについては「6週間治療」とよくいわれるが、それを支持するエビデンスは乏しく、ほとんどエキスパート・オピニオンであるといってよい。近年、静注から経口薬へのスイッチが可能ではないかという研究も出ており、この「常識」が変化する可能性が示唆されている。

Iversen K, et al. Partial Oral versus Intravenous Antibiotic Treatment of Endocarditis. N Engl J Med 2019; 380: 415–424.

 この経口スイッチの根拠となったのがPOET criteriaである。POETはPartial Oral Treatment of Endocarditis trialから来ている。臨床所見、血液検査、画像検査を用いて、患者が安定したかどうかを判断する基準だ。POET試験では、安定した左心系IE患者の場合、点滴治療期間を16日短くし、経口薬にスイッチすることが可能であった。6カ月時点の予後は通常の静注治療に対する非劣性が示され、その後の中央値5.4年のフォローアップでより良い生存期間と関連していた。

Pries-Heje MM, Wiingaard C, Ihlemann N, et al. Five-Year Outcomes of the Partial Oral Treatment of Endocarditis (POET) Trial. N Engl J Med 2022; 386: 601–602.

 近年、細菌感染症の治療について“Shorter is better”というスローガンの下、従来長めに治療していたものを短くできるのでは、というムーブメントが起きている。まあ、医療全体に流れる“Less is more”の一亜型といってもよい。われわれも急性胆管炎の抗菌薬治療期間を短くできるのでは、という研究を発表している。

Doi A, et al. Shorter duration of antibiotic treatment for acute bacteraemic cholangitis with successful biliary drainage: a retrospective cohort study. Clin Microbiol Infect 2018; 24: 1184–1189.

 IEについても同様のムーブは可能ではないか。今回紹介する研究は、そういうランダム化比較試験(RCT)である。研究者はPOET研究と基本的には同じ、デンマークの研究者たちである。

Bundgaard H, et al. Response-Tailored or Standard-Duration Antibiotic Treatment for Infective Endocarditis. N Engl J Med 2026; 395: 1600–1609.

岩田 健太郎(いわた けんたろう)

神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より現職。著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。

岩田 健太郎
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