NEJM総説:心血管疾患治療でのSGLT2阻害薬(Gliflozins)、付けたり:山辺赤人、ブラウンワルト伝記、勝海舟、吉田松陰
今、心不全と腎不全に非常に大きなパラダイムシフト(物の見方の劇的変化)が起こっています。この数年でSGLT2阻害薬が心臓、腎臓に対し圧倒的保護作用のあることが明らかになりました。今年(2022年)2月、エンパグリフロジン(ジャディアンス)は心不全患者で心血管死亡、心不全入院を減らすため米食品医薬品局(FDA)は駆出率(EF)にかかわらず使用を推奨しました!
また今年、米国糖尿病学会(American Diabetic Association)は2型糖尿病で動脈硬化性心血管疾患、多数リスク因子、糖尿病性腎障害がある場合、SGLT2阻害薬かGLP-1受容体作動薬あるいはその両者による治療を推奨しました。
N Engl J Med総説「心血管疾患治療でのSGLT2阻害薬(Gliflozins)」(N Engl J Med 2022; 386: 2024-2034)要点は下記11点です。
- Phlorizinはリンゴ樹皮抽出物、尿細管でSGLT2阻害→ブドウ糖再吸収阻害→尿糖排出
- 経口SGLT2阻害薬は田辺製薬が開発、RCTで心血管リスク確認→心・腎保護作用判明
- ジャディアンス(EMPA-REG、2015)で心血管疾患14%減、2~3週で効果! 心不全入院35%減
- SGLT2阻害薬(カナグル、フォシーガ)で心血管イベント低下、心不全入院は全てのtrialで減少
- SGLT2阻害薬の心・腎保護作用は血糖と無関係。HFpEFにも有効(EF 25~65%)!!
- SGLT2阻害薬は腎機能無関係に透析、腎移植、腎死減少(RR 0.67)。初期eGFR dipあり
- SGLT2阻害→尿細管Na↑→緻密斑が輸入細動脈縮小→過剰濾過↓→腎改善
- 心臓への作用機序は不明。AS生存期間:狭心症後5年、失神後3年、心不全後2年
- 副作用:陰部真菌、UTI、腎盂腎炎、血糖正常ケトアシドーシス、カナグルで足趾切断?
- SGLT2阻害でAf、AF、心室性不整脈、心臓死いずれも減少
- SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬併用は相乗効果あるが価格が高過ぎる
過去10年で起こった大きなブレークスルー(breakthrough)というと、小生の独断では次のようなものを挙げたいと思います。 今回はこれらと同じくらいの大きなパラダイムシフトだと思います。
・HFrEF(EFの低い心不全)に対する神薬ACEi、ARB、β遮断薬、アルドステロンの使用 (心不全の薬物治療 Lancet March9、2019)
・ARDSに対する低換気療法(permissive hypercapnia、TV 4~6mL/kgで死亡率40→31%) (ARDSの低換気療法 N Engl J Med Sep.13, 2007)
・ピーナツアレルギーに生後4~6カ月での早期ピーナッツ投与による免疫寛容発達 (食物アレルギー N Engl J Med Sep.21, 2017)
・出血性ショックに対する大量輸液の禁止、トランサミン投与(もはや戦場の常識) (重症外傷患者の初期治療 N Engl J Med Feb.21, 2019)
・敗血症でのqSOFAの開発(プライマリケア、戦場で使える) (敗血症と敗血症性ショック Lancet, July 7, 2018)
・GGTG1遺伝子ノックアウトによる超急性期反応抑制と臓器異種移植の実現 (免疫・遺伝子エンジニアリングによる臓器移植の未来 N Engl J Med, Dec.23, 2021)
小生、孫は2人いますが生後4カ月から卵やピーナツなどアレルゲンになりそうなものをガンガン与えるように子供たちに厳命しております。免疫寛容の発達にはwindow period (限られた期間)があり生後4~6カ月なのです。
SGLT2阻害薬は当初小生、「糖の尿排泄で血糖を下げるんなら糖質制限食とたいして変わらなくね?」くらいにしか思っていませんでした。
ところが2015年N Engl J MedのEMPA-REGで確認された仰天の「エンパグリフロジン(ジャディアンス)の心臓と腎臓の保護作用」をきっかけとして矢継ぎ早にSGLT2阻害薬のランダム化比較試験(RCT)が組まれ、いずれも2型糖尿病の心不全、腎不全に対するSGLT2阻害薬の劇的効果が示されました。
いままで糖尿病でHbA1c<7.0%として15~20年後の微小血管障害は防げてもアテローム性心血管障害や腎障害はたいして予防できなかったのです。
そして今年、腎不全に対しEMPA-KIDNEY trialがエンパグリフロジン(ジャディアンス)で6,000例の成人で始まったにもかかわらず、その腎保護効果がもはやあまりに明白なことから今年3月16日なんと中止されるに至りました。
またHFrEF(EFが低下した心不全)には神薬、ACE阻害薬、 ARB、β遮断薬、アルダクトンなどが必須ですが、HFpEF(EFの保たれた心不全)には有効でなくせいぜい利尿薬くらいしかありませんでした。
ところが昨年、N Engl J MedのEMPEROR-PreservedでHFpEFに対するエンパグリフロジン(ジャディアンス)の有用性が「糖尿病の有無にかかわらず」証明され、ついに私たちはHFpEFに対しても対戦車兵器ジャベリン(槍)のようなSGLT2阻害薬を手にしたのです。いまや心不全、腎不全なら血糖とは関係なしにSGLT2阻害薬投与が推奨されるに至りました。
しかし一体なぜSGLT2阻害薬に心臓、腎臓の保護作用があるのか分かりませんでした。
今回、N Engl J Medは「心血管疾患治療でのSGLT2阻害薬(Gliflozins)」の総説を組んでくれました。臨床医が一番知りたいことをN Engl J Medはよく分かっているよなあと感動します。 痒い所に手が届くN Engl J Medに感謝、感謝です。それでは大興奮のN Engl J Med総説です!
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仲田 和正(なかた かずまさ)
西伊豆健育会病院病院長。1978年に自治医科大学卒業、静岡県立中央病院(現静岡県立総合病院)全科ローテート研修、1980年に浜松医科大学麻酔科研修(4~9月)、静岡県国民健康保険佐久間病院外科・整形外科。1984年に自治医科大学整形外科、大学院、1988年に静岡県島田市民病院整形外科、1991年に静岡県西伊豆病院整形外科。
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