〔NEJM総説〕重病・人生終末期のナビゲーションと告知
付けたり:光源氏の末期乳母の見舞い、京都内裏、黒澤明『生きる』、七人の侍、ニーチェ、 ツァラトゥストラ、ワイマール、キュブラー・ロス『死ぬ瞬間』
小生この正月明けに腰痛で受診した40歳代女性の方のX線を一目見るなり絶句しました。
脊椎、腰椎のmottled osteoporosis(虫食い像的な骨粗鬆症)があり一目でがんの全身骨転移か、多発性骨髄腫と分かる画像でした。ところが全身CT、採血、胃カメラを確認しましたが骨格変化と肝機能障害、高Caを除き、肺やその他内臓にはたいした異常がありませんし、免疫電気泳動でもM蛋白はありません。しかし脊椎椎弓の破壊、椎体皮質骨の溶解があり、いつ両下肢麻痺が突発するか分かりません。
この方は医療関係者だったので事の重大性は分かるだろうと思ったのですが、「多発性骨髄腫ではない」の一言で安心してしまい、説明してもまるで他人事なのです。
ご主人にも同席してもらい骨生検と原発がん治療、放射線治療が必要だからと即座のがんセンター受診、入院をお勧めしました。しかし仕事もあるし夫も忙しく、リスクは分かるし小生の責任は問わないから1月は都合が悪く、どうしても2月になってからというのです。調理師のご主人も職場に調理師は2人しかおらず自分も休めないとのことです。
小生、自分の伝え方が何かまずかったのだろうかと悩みました。
たまたまN Engl J Med(2024 Jan 4; 390: 63-69)にこの「重病・人生終末期のナビゲーションと告知(総説)」があり真剣に熟読しました。著者は米・ハーバード大学、MGH(Massachusetts General Hospital)の緩和医療科(palliative therapy)の医師たちです。
N Engl J Med(2024 Jan 4; 390: 63-69)「重病・人生終末期のナビゲーションと告知(総説)」最重要点は以下の8点です。
- 末期トライアルで単発のadvance care planningでQOL、アウトカム改善はなかった
- 緩和ケアのRCTでは会話繰り返しにより気分、QOL、疾患予後の理解が改善する
- 患者に正確な予後を伝えよ(ChatGPT有用、仲田)。同時に医師は楽観的に接せよ
- 不良予後認識には必ず会話の繰り返しと時間が必要で、そして存在主義的成熟に至る
- 「患者にとって最重要なことは何か」を聞き出しそれに寄り添え
- 具体的技法:予後提示、感情に反応、会話に近親者も、最重要なことは、受けたいケア
- 必須カルテ記載事項:患者をケアする全員が閲覧できるようにする
- 症例:正確な予後示す→感情起伏に共感→患者の重大事を知る→記載し介護者で共有
驚いたことの1つは、なんと単発のACP(advance care planning:前もって人生終末期の選択肢を決めておくこと)は、多くのRCT(randomized controlled trial、ランダム比較試験)によると患者のQOLやアウトカム改善にはつながらず否定的だというのです。
上記の患者さんのように非現実的な希望を持つのは正常反応であり、重要なのは患者との会話を何度も時間をかけて繰り返し、非現実的な希望と、どん底の間を上下しながら(oscillating)時間をかけて対話して、初めて予後の認識(prognostic awareness)に至るというのです。この反復する過程(iterative process)を経なければ予後の認識には到底至らないのです。小生、この患者さんには納得してくれるまで頻回に外来に来ていただこうと思いました。
全文を読むにはログインが必要です
ログインして全文を読む
無料でいますぐ
会員登録を行う
- ご利用無料、14.5万人の医師が利用
- 医学・医療の最新ニュースを毎日お届け
- ギフト券に交換可能なポイントプログラム
- 独自の特集・連載、学会レポートなど充実のコンテンツ
\ 60秒でかんたん登録 /
会員登録
仲田 和正(なかだ かずまさ)
西伊豆健育会病院病院長。1978年に自治医科大学卒業、静岡県立中央病院(現静岡県立総合病院)全科ローテート研修、1980年に浜松医科大学麻酔科研修(4~9月)、静岡県国民健康保険佐久間病院外科・整形外科。1984年に自治医科大学整形外科、大学院、1988年に静岡県島田市民病院整形外科、1991年に静岡県西伊豆病院整形外科。
.jpg)









