研究の背景:仮承認された再生医療4製品のうち、本承認に至ったものはゼロ 驚くべきニュースが飛び込んできた。人工多能性幹(iPS)細胞を用いた再生医療製品2件(パーキンソン病治療「アムシェプリ」と重症心不全治療「リハート」)が、国際的に悪名高い「条件及び期限付製造販売承認制度(再生医療早期承認制度)」を使って仮承認されたのである。例によって、国内メディアはこぞって「世界初のiPS医療の実用化へ」と煽りまくり、iPS医療の国民への印象操作に余念がない。日本の医療の時計は、iPSが「国家プロジェクト」となって以来14年間止まったままである。 それでも最近になって、錦の御旗の下に長年患者と国民を巻き込んで暴走してきた「日本の再生医療」に暗雲が立ち込めていた。2024年には重症心不全に対するハートシートは有効性が示せず本承認が否決され、閉塞性動脈硬化症に対するコラテジェンも市販後に治験結果を再現できず撤退した。いずれも、上記の「再生医療早期承認制度」によって仮承認された製品である。この制度は、再生医療製品に対してであれば、最低レベル・極少症例の試験で「有効性が推定」されれば仮承認を与え、さらには本承認までの試験中も公的医療費(公的保険や高額療養費制度)が充填されるという、国際常識とは大きく乖離した制度である。 これに対して私はずっと警告を発してきたのだが(関連記事「化けの皮が剝がれた日本の再生医療」)、例によってなんの影響力もない。国内では握りつぶされるだけなので、世界に告発したところ(Stem Cells Dev 2025; 34: 149-151、関連記事「『日本の再生医療に暗雲』と世界に告発」)、海外からは大きな反響があった。しかし、国内ではやはり何も変わらない。そこで、これも「再生医療早期承認制度」による仮承認製品である脊髄損傷再生医療ステミラックの不透明な経緯も世界にさらしてやったら(Spine J 2026年1月7日オンライン版、関連記事「NHKによる偏向報道をトップジャーナルで批判」)、また海外からは称賛されたが、国内では現在審査の最中ということで、かえって怒られた。 今回のiPS製品承認は、私の影響力のなさがあらためて露呈したということかもしれない。しかし、過去にこの「再生医療早期承認制度」で仮承認された4製品のうち、本承認に至ったものはゼロである。さすがに厚生労働省・医薬品医療機器総合機構(PMDA)も危機感を抱いたのだろう。ハートシートとコラテジェンの本承認見送りを受けて、「再生医療早期承認制度に関するガイダンス」を発出し、「適切な臨床試験デザインに基づく有効性の推定が必須」とした。ところが、その舌の根も乾かぬうちに今回のiPS製品が仮承認された。 まずは、この2つのiPS製品の仮承認の根拠となった論文を紹介して、今回の承認の正当性を検証してみる。