「抗菌薬が角膜創傷治癒を遅延」の衝撃
脂質代謝を介した新機序をマウスで解明
研究の背景:たかが点眼?抗菌薬使用で乱れる眼表面環境
2015年、世界保健機関(WHO)が薬剤耐性(AMR)グローバル・アクションプランを採択してから約10年。われわれの体表面に存在する常在菌には、病原性を持つ微生物の増殖を抑制する働きがあり、その重要性が注目されるようになっている。抗菌薬の不適切使用が、常在菌の乱れ(dysbiosis)を生じる一番の原因だということも広く知られてきた。
耐性菌の存在はペニシリン発見以前から指摘されており、抗菌薬を長期に不適切に使用すると、常在菌の乱れにより病原性微生物が選択的に増殖することも分かっている。そのため発熱、咳嗽、鼻水だけの患者に抗菌薬を投与すべきではなく、適正使用が求められている。
点眼に関しても同じことがいえる。眼表面の常在菌を守るため、充血・眼脂だけで抗菌薬点眼をしてはならない。しかし、実際のところ「たかが点眼」という意識の下、長期に抗菌薬点眼を処方されている高齢者を見かける。その結果、現在、わが国では多くの高齢者の眼表面からキノロン高度耐性のコリネバクテリウムが検出される。
今回紹介する慶應義塾大学/理研メタボローム研究チームの小川氏らの論文では、抗菌薬の全身・局所投与が眼表面dysbiosisを介して、脂質代謝の変化から炎症細胞に作用し、角膜上皮細胞の創傷治癒にも関与するという新たな局面が明らかになった(FASEB J 2026; 40: e71429)。
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