ドクターズアイ 米田正人(消化器内科)

MASLDは「見守る」から「治す」時代へ!

Survodutideが示した次世代MASH治療の可能性

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研究の背景:患者の9割以上がNITsのみで登録

 現在、私たち臨床医はFIB-4 indexやトランジェント・エラストグラフィ(VCTE)、ELFスコアなどの非侵襲的検査(NITs)を用いて、治療介入が必要な代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者を抽出できるようになった。一方、治療についてはこれまで「食事療法と運動療法を頑張りましょう」という生活習慣改善が中心であった。診断技術は飛躍的に進歩したにもかかわらず、有効な薬物治療が限られていたことが、MASLD診療における最大の課題であった。

 こうした中、今年(2026年)6月、日本でGLP-1受容体作動薬セマグルチドが中等度から高度の線維化を有する非肝硬変の代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に対して保険適用され、MASLD診療は新たな時代を迎えた。2型糖尿病や肥満症の治療に加え、MASHそのものを治療標的とする薬物療法が現実のものとなった。さらに、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドもMASHを対象とした臨床試験で有望な成績が報告されており、新たな治療選択肢として期待が高まっている。

 今回紹介するSYNCHRONIZE-MASLD試験は、さらなる可能性を示すものである(Nat Med 2026年6月7日オンライン版)。本試験で評価されたsurvodutideは、GLP-1受容体だけでなくグルカゴン(GCG)受容体にも作用するデュアルアゴニストである。GLP-1による食欲抑制や体重減少に加え、GCG受容体刺激によって肝臓で脂肪酸酸化を直接促進し、肝脂肪を減少させるという独自の作用機序を有している。すなわち、「体重を減らすことで肝臓を改善する」だけではなく、「肝臓そのものを積極的に治療する」可能性を秘めた薬剤として、大きな注目を集めている。

 さらに特筆すべきは患者選択の方法である。従来のMASH治験では肝生検による診断が必須であったが、本試験では90%以上の患者がFIB-4 indexやVCTE、MRIなどのNITsの診断のみで登録された。これは日常診療を反映した試験デザインであり、一般内科医や糖尿病専門医がNITsを共通言語としてMASLD診療に参加できる新しい時代の到来を象徴している。

米田 正人(よねだ まさと)

横浜市立大学肝胆膵消化器病学主任教授

肝臓病学を専門とし、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、肝線維化、肝硬変に関する診療・研究に幅広く従事している。特に、超音波エラストグラフィやMRIを用いた非侵襲的診断法(NITs)の開発・臨床実装を推進し、MASLDを全身疾患として捉えた病態解明と治療戦略の構築に取り組んでいる。国内外の多施設共同研究や国際共同研究にも積極的に参画している。日本消化器病学会・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)およびMASLD診療ガイドラインでは作成委員を務め、日本におけるMASLD診療の発展と普及に貢献している。学会活動としては、日本消化器病学会評議員、日本肝臓学会評議員をはじめ、多くの学術団体において役職を務めている。

米田 正人
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