ドクターズアイ 倉原優(呼吸器)

間質性肺疾患で肺がんリスク約2倍、日常診療で警戒を

特発性肺線維症以外の病型でも検討

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研究の背景:肺線維症診療で肺がんをどう監視するか

 間質性肺疾患(ILD)、特に特発性肺線維症(IPF)に肺がんが合併しやすいことは、呼吸器診療ではよく知られる。IPFと肺がんはともに高齢、男性、喫煙歴という背景を有し、線維化と発がんには慢性炎症、細胞老化、遺伝学的変化などの共通する経路が想定される。腫瘍は線維化領域に隣接して生じることも多く、IPFと肺がんの合併は単なる偶然とは考えにくい。

 臨床上の難しさは、ILD患者では肺がんを発見した後の治療選択肢が少ないことである。手術、放射線、化学療法、免疫療法のいずれも急性増悪やILD進行のリスクを伴う。だからこそ早期発見には意味がありそうだが、ILD患者を対象とした肺がんスクリーニングについて国際的な推奨はまだない。IPF以外の線維性ILDでも、どの程度のリスクを想定すべきか十分に分かっていなかった。

 今回紹介する研究は、英国の大規模プライマリケアデータベースを用い、ILD患者における肺がんの有病割合と新規発症を一般人口と比較したものである(ERJ Open Res 2026; 12: 01522-2025)。解析の結果、ILDの肺がんリスクは約2倍であることが分かった。

 この研究の重要な特徴として、IPFだけでなく膠原病関連間質性肺疾患(CTD-ILD)、過敏性肺炎(HP)についても評価した点が挙げられる。ただし、本研究が答えるのは「ILD患者で肺がんがどれだけ多いか」であり、「CT検診により肺がん死亡が減るか」ではない。この線引きを意識して結果を読む必要がある。

倉原 優(くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

倉原優
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