ドクターズアイ 加藤忠史(精神)

謎多きうつ病の薬、ズラノロンの使い方を考える

4つの患者集団に基づくアプローチ

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研究の背景:世界に先駆け日本で承認、どう使うか未確立

 今年(2026年)4月22日の本欄で、3月にうつ病・うつ状態を適応として発売された新薬ズラノロンについてご紹介した(関連記事「抗うつ薬にあらず!? 新薬ズラノロンの本質」)。簡単に復習しよう。

 産後うつ病患者でニューロステロイドであるアロプログネノロンが低値を示すことが見いだされ、産後うつ病の治療薬として、この生体物質を製剤化したブレキサノロン(Brexanolone)が開発された。同薬は60時間の点滴投与が必要であったため、経口版であるズラノロンが開発され、ズラノロンの発売とともに、ブレキサノロンは発売中止となった。

 ズラノロンは米国では、2023年に産後うつ病の治療薬として承認され、うつ病に関する臨床試験も行われたが、臨床試験結果に一貫性がないことから、うつ病に対しては承認されなかった。

 ズラノロンがうつ病全般に対して承認されたのは、日本が初めてであり、世界的に見ても、産後うつ病以外の一般のうつ病において、ズラノロンをどのように使うべきか、一致した見解には至っていないのが現状であり、日本うつ病学会の『うつ病診療ガイドライン2025』発表後に発売されたため、ガイドラインおける位置付けも確立していない。

 ベンゾジアゼピン(BZD)系薬と同様に、γ-アミノ酸(GABA)A受容体に作用するという観点からも、ズラノロンをどう使うべきかについて検討課題となっている。

 4月の記事で筆者は、ズラノロンを使うべき患者は「抗うつ薬を用いなくても2週間後には改善が見込まれるようなうつ病患者」と書いたが、これは全く指標にならない。

 その後、ズラノロンの第Ⅱ相試験と第Ⅲ相試験の結果をまとめた論文(PCN Rep 2026; 5: e70320)が発表されたので見てみよう。

加藤 忠史(かとう ただふみ) 

 順天堂大学精神医学講座主任教授。1988年東京大学医学部卒業、同病院で臨床研修、1989年滋賀医大精神医科大学講座助手、1994年同大学で医学博士取得、1995年米・アイオワ大学精神科に留学(10カ月間)。帰国後、1997年東京大学精神神経科助手、1999年同講師、2001年理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームリーダー、2019年理化学研究所脳神経科学研究センター副センター長を経て、2020年4月から現職。

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